2026年2月15日(日)「クライム101」

CRIME 101・2026・英/米・2時間15分(IMDbでは2時間19分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、岸田恵子/シネスコ・サイズ(ドルビーVISION、IMAX。IMDbでは2.39、Sony CineAlta Venice 2)/ドルビーATMOS(IMDbにはなし)
(英15指定、米R指定)(ATMOS上映もあり)

公式サイト
https://crime101.jp
(情報少、劇場案内なし)

75点

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 面白かった。いわゆるピカレスクもの。犯罪者の話だが、人を絶対傷つけないとか、保険でカバーされている宝飾店だけを狙うとか、主人公は悪い人じゃないというか、むしろ良い人のような感じで、犯罪なのに応援できた。確かに雰囲気は「ヒート」(Heat・1995・米)に似ているかもしれないが、ボクはそれほどとは‥‥。

 凄いカー・チェイスでハラハラする。いつか殺されてしまうのではないか、いつか逮捕されてしまうのではないか、という雰囲気が常にあり、ドキドキする。しかも使われている曲が全編ほほ同じで、ビートを強調したハードボイルド風のもの。鼓動のようにドンドンというリズムが余計に不安を煽る。ひょっとして後半になるとテンポが上がっているのではないだろうか。そんな怖さに、本当の悪党の怖さが加わって、全体にかなり怖い。しかも一般市民というか、犯罪者じゃない方の小悪党がまたかなり悪い。そういった全体のバランスが実に上手いなあと。その上、大金持ちと路上生活者などの格差社会も描いている。

 キャラクターの設定も上手く、主要な登場人物〈強盗、刑事、保険屋〉の3人は魅力的。見せ方も上手く、群像的な描き方が良い。ただおそらくは長くなりすぎたためにカットしたのだろう、強盗に指示を出す故買屋の老人(ニック・ノルティ!)と、強盗の彼女となる女性は、それぞれ重要な存在でありながら、あまり描かれていない。そこが残念といえば残念。


 予告で使われていた「オレには時間が無い」という場面は本編ではなかったと思う。これも長くなりすぎたために、関連する部分をまるごとカットしたのではないだろうか。だとしたら、もったいない。DVDとかブルーレイ発売の時にディレクターズ・カットとかで復活するとかないかなあ。ただ「自分が思うほど時間はない」というセリフはあった。予告の訳し方が違ったのか。

 原作はドン・ウィンズロウの中編小説だそうで、公式サイトによれば、『野蛮なやつら』はオリバー・ストーン監督で「野蛮なやつら/SAVEGES」(Savages・2012・米)として映画化されているという。たしか、悪党だらけヤクだらけ暴力だらけだが、なかなか面白かった気がする。ほかにも面白かった悪党アクション「ボビーZ」(The Death and Life of Bobby Z・2007・米/独)の原作もこの人だ。

 その原作を脚本化したのが、プロデューサーと監督も務めるバート・レイトン。よくできた脚本で、セリフも凝っている。刑事に同僚が冴えない服に冴えない車を「わざと貧乏らしく見えるようにしている」という。そして「コロンボか」と。そう言えば葉巻じゃないけどタバコを吸ってた。さらに強盗とのやりとりで、古い車が好きだという話からマスタングが出てきて、スティーブ・マックイーンの話になり、強盗が「ブリットのカーチェイスがいい」と言うと(ここから本作のカー・チェイスも来ているのか!)、若いのに良く知ってるなと。そして泥棒の話だと探り合いをするあたりも、実に良い感じ。ラスト、彼女のデスクに手紙が届いて、中の写真と書かれている言葉もイイ。

 編集というか、カットのつなぎ、構成もうまい。最初全く関係ない〈強盗、刑事、保険屋〉の3人だが、それぞれ実は至近距離ですれ違っているとか、シンクロするようにそれぞれの朝が始まったり。持っているもののアップが、別な人物が持っているもののアップに重なって別の場面に変わったりと、凝っている。編集なのか、演出なのか‥‥うまいなあ。

 監督のバート・レイトンは、多くのTVムービーやTVシリーズのプロデューサーを務めていて、脚本も8作品ほど書いている。劇場作品1作目は犯罪者のドキュメンタリーで、続く第2作目が実話に基づく大学生のずさんな犯罪ドラマ「アメリカン・アニマルズ」(American Animals・2018・英/米)(本作の金髪男、バリー・コーガンが出ている)と、ずっと犯罪ものをテーマとしてきたよう。「アメリカン・アニマルズ」はともかく、本作は劇映画として良くできていて、次作も期待できるかもしれない。

 意外な出演者では、たぶん別れることになる刑事の妻役で出ていたのがジェニファー・ジェイソン・リー。TVドラマ「コンバット」のサンダース軍曹を演じたヴィック・モローの娘で、「ブルックリン最終出口」(Last Exit to Brooklyn・1989・英/西独/米)あたりから注目されたのではなかったかと。最後に劇場で見たのは「ポゼッサー」(Possessor・2020・加/英/豪)だったかも。

 主人公のクリス・ヘムズワースが使うのが、たぶん高価なH&KのSFP9(VP9)。最初に襲われるアラブ人のドライバーは、親が使っていたというクラシックな4インチくらいの.32口径とおぼしきシルバーのリボルバー。大金持ちが金庫に隠しているのは、フラッシュ・ライトとドット・サイトを装着したグロック。LAPDもグロック。アタッシュ・ケースの中にダイヤと一緒に入っているのはステンレスのS&Wショーティ(6906?)。

 公開3日目の初回、日本橋の劇場は16〜17分前に開場。観客層は中高年の高寄り、男女比は最初6対4くらいで男性が多かった。最終的には521席に4〜4.5割くらいの入り。10席×2列のP席は14席くらいが埋まった。もっと入っても良い作品だと思うが、はたして今後どうなるか。

 10分くらい前からシネマ・チャンネル。終わって半暗になり、非常口案内からランプが消えて、ちびゴジラの本予告。ラストにマナー、忘れ物注意で暗くなり、映写機のマスクが左右に広がってフルのシネスコに。TCXデモ、ATMOSのCGらしい葉っぱデモと続いて、足元注意、迫力フルの映画泥棒、映倫で、MGMのライオン・ロゴ、アマゾン・ロゴ、ソニー・ロゴから始まる本編へ。


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