★釣りのタブーとは?★


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 釣りやハンティングには、昔からタブーというかジンクスというようなものがあるそうです。釣り師でもありハンターでもあるウッディ小林さんが教えてくださいました。

 日本の場合、その1つは梅干しだそうです。理由はわかりませんが、当日梅干しを持って行くと、絶対に釣れないそうです。姿を見てもいけないそうです。そればかりか、当日はその言葉を口にしてもいけないとか。

 アメリカでは、それがなぜかバナナなのだそうです。絶対に釣り場へ持っていってはならないそうです。

 つい最近、ウッディさんの釣り仲間の間でこんなことがあったそうです。ウィロー・クリークというフィッシング・ポイントへ行ったときのこと、ひとりの人がそのタブーを知らなくて、お昼用にとバナナをクーラー・ボックスに忍ばせていたのだそうです。

 一行はウィロー・クリークに到着すると、すぐにボートで川を下ろうとしましたが、あいにくと込み合っていてゴム・ボートしかないというのです。そこで、それでもいいからと言うと出てきたのが、どこから見てもバナナの形の真っ黄色のボート。しかも船頭さんというのがとぼけたおっさんで、本名かあだ名なのか呼び名がチキータ。ほとんど全員がいや〜な予感がしたそうです。

 それでも気を取り直して、釣り場に着くと早速テントを張り釣り糸をたれたそうです。しかし、魚影が見えるのにちっともヒットしない。どうも一番いい場所にある流木がじゃまをしているということで、Aさんが川に入っていってそれをどかそうとしたそうです。

 ところが、思ったより流れが速くて動かすことができない。Aさんは諦めて岸に上がり、濡れたズボンを脱いで岩の上に広げて、乾かすことにしたそうです。

 そして何も釣れないままお昼に。例の人がクーラー・ボックスからバナナを取りだした。Aさんはその匂いをかいでしまい、一気に落ち込んだ。まあまあ元気を出してと、妹さんが心づくしのおにぎりを差し出したのだそうです。かたじけないとばかりにそれにかじりつくと、中からなんと巨大な梅干しが……。

 結局1人も釣れずに帰ることになったそうです。そして帰路の途中でAさんが岩場にズボンを忘れてきたのに気づいた。ポケットの中には財布に免許証、クレジットカード、現金150ドル、50ドルもするスパイダルコのナイフそのたもろもろが入っていた。あわてて電話をしたがもう後の祭り。

 悪いことはこれで終わらない。アンカレッジまであと少しというところで、突然Aさんの車が止まったのだそうです。何事かと調べてみると、これが何と単純なガス欠。数キロ先のガソリンスタンドまでとぼとぼ歩いてガスを買いに行ったそうです。

 数日後、Aさんのもとにズボンが見つかったという連絡が入りました。すぐに車を飛ばしていって見ると事務所がしまっている。なんと2時間も待たされたそうです。あげくのはてに財布の中身は空っぽ。かろうじて免許証だけが返ってきたそうです。

 とまあ、ウッディさんによると「迷信をあなどると、友人にまで被害が及ぶ」という怖いお話でした。ウッディさん、貴重な体験談をありがとうございました。


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