ホーム<-お勧めの逸品

宮城県石巻市雄勝町(旧桃生郡雄勝町)は国内産硯(和硯)の埋蔵量・採掘量・生産量(国内90%以上のシェア)の日本最大を誇る生産基地でしたが、 2011年3月11日の東日本大震災壊滅的被害を受け、和硯の未来が真っ暗闇となりました。書を愛するものの誰もが、和硯の消え行くことを望むわけもな く、何かわずかでも応援したいという思いでいる中、長らく雄勝の硯関係者と方々と交流していた私たちは、何をどう具体的に、また、被災直後だけでなく、長 く続けて行くにはどうしたらいいのか考えていました。

昨年夏、大東文化大学書道研究所で震災支援プロジェクトの話を伺いました。日本最大の書道教育・研究現場である大学のプラ ンに感銘を受け、何かお手伝いでいないかと思い、新しいフォルムの和硯をクリエートするこの雄勝硯支援プランが企画されました。生産現場の(株)春日(雄 勝硯生産販売協同組合)と大東文化大学、そして私どものトライアングルが、和硯の未来にわずかなりとも光を当てられたら幸甚のいたりです。

以下、企画内容だけでなく、雄勝町の場所や概要、硯坑や石質なども含んだ雄勝硯の全体像など知っていただけるようにしておりますので、多くの方々に見ていただき、ご協力いただけますようお願い申し上げます。


雄勝はどこにあり、どんな町ですか?

【雄勝町の概要と地形】

北緯31度、東北地方太平洋側、三陸海岸の南部に位置し(地図参照)人口2千数百人の静かな漁業と石材の町です。町の地形 は典型的なリアス式海岸であり、細く入り組んだ雄勝湾の先端部分に流れ込む大原川には鮭も戻り、河口から北の旧町役場周辺に町の中心部があり、海岸に沿っ て集落が点在していました。数十メートルの津波はこれらを全て飲込んでしまいました。(PDF1参照)

硯の石はどういうもので、どこでとれますか

【粘板岩と6鉱脈】

北上山地南部は内陸部が石碑や墓石で有名な稲井石(別名:松島石・仙台石)を産出し、海岸部の雄勝町では硯やスレート材で有名な玄昌石が採れます。この玄 昌石で作る硯が雄勝硯です。色は漆黒で2億年の時を内包する北上山系登米層古生代上部に属する粘板岩。光沢、粒子の均質さが優れ、伝来では室町時代から六 百年間硯の製造が継承されてきました。採取された原石のわずか3%が完成品となりますが、無尽蔵と言われる埋蔵量を背景として国内最大を誇っています。 (玄昌石は別に壁材や屋根材のスレート材としても利用されており、東京駅赤レンガの屋根材は有名)  技術的には天然硯や角硯(四五平・五三寸など)はもちろんのこと、小町硯・唐型硯・猿面硯・八稜硯など和硯の代表的な硯形を製造できる数少ない地域でし た。(PDF2 写真9参照)  また、玄昌石は一般的には一種類の石材と考えられているが、実は6種類あり(以前は名振・大浜を含め8種)、三十年前には全ての坑で採掘されていましが、2004年までには3ヶ所、震災前では採掘は別紙地図の①と⑤だけになっています。(PDF2・地図参照)その6坑の詳細説明はPDF3をご参照下さい。

企画品紹介

雄勝抄手硯 〈小四六型〉

今回ご紹介するものは「明神山」の石材で「小四六」という寸法の原石を元としています。写真のように長い帯状の層が幾重にも重なる模様が特徴の石材です。 このモデルは歴代の名硯を参考にして書道研究所がデザインした大人の風格を持つ抄手硯です。足はがっちりと安定感を持たせ、岡(陸)は硯板調にし、各角は さっとなめて、柔らかさと重厚感を生み出した硯です。コレクションとしてはもちろん、細字・かな作品、手紙などの実用にもご利用いただけます。


雄勝抄手硯 〈小四六型〉

本文 長167mm×厚み27mm×横幅108mm
紙箱・巾着入りです。送料は離島を除きサービスします。

特別価格 13,000円+税



別売り桐箱〈手作り日本製〉 

別売りの木箱は製造中止となりました。

ご注文はお電話、またはメールで。お支払いはゆうパックの着払いになります。





和硯の将来と玄昌石

近年液体墨の需要拡大や安価な中国硯の普及により和硯の使用が激減してきたことに加え、雄勝が震災で壊滅的な被害を受けたことは、和硯の将来像に大きな陰りを落としてしまい、雄勝硯が復旧・再生しなければ、存続すら危ういことになってしまっています。

奈良時代から続く日本の伝統文化の一つであり、長きにわたり日本の書道を支えてきた和硯を消滅させてはならず、次世代につなげていくには、どうしたらいい のか。地元でも色々と考えられていますが、従事者の高齢化と震災当時は道具や機械類がほとんど流されてしまい、採掘はじめ生産工程全ておいてゼロからの再 出発を強いられていました。いまだに有効な方法は見つかっていませんが、少しずつ雄勝硯生産販売協同組合を中心に20代の若者も加わって動き出していま す。

現在、存続が問われるこの危機的な状況の下にあって、過去のことを整理して、改めて新生雄勝硯として出発していただきたいと私たちは心から願っています。 今後はきちんと情報公開をして、様々な人が係われるようなネットワーク作り、そして、例えば一般普及品と専門品(今回のような企画品を含む)というように 商品の棲み分けをして、素材にこだわり、雄勝石を一括りにせず、例えば、「玄昌石(硯浜坑)」「玄昌石(御留山坑)」などと表記して区別していけば、真に 雄勝硯の姿が見えてくるはずだと考えます。もちろん、停止している坑の再採掘などには様々な障害があり簡単なことではないと思いますが、新たに生まれ変わ るということは、白紙の状態と同じであり少しずつ一つ一つ積み上げていくことが大切ではないでしょうか。

私たち書道関係者は将来を見据えて各方面からバックアップすることが課せられていますが、そのためには経済的支援だけでなく、「雄勝硯」とは何かということを、即ちその姿を正確に捉えることも必要です。歴史や石質など玄昌石(雄勝硯)の詳細を整理して示しますのでPDF4をご参照下さい。

最後に、現在の和硯生産は、雄勝町以外に、紫雲硯(岩手県)、小久慈川硯(茨城県)、雨畑硯(山梨県)、龍渓硯(長野県)、鳳来寺硯(愛知県)、高田硯 (岡山県)、赤間硯(山口県)、蒼龍硯・中村硯(高知県)紅渓硯(宮崎県)、若田硯(島根県)、など10地域程ありますが、震災前はこれらを総合しても、 生産量・流通量において雄勝の比ではありませんでした。


※写真・文章掲載について この頁の写真掲載につきましては多くの方々のご協力によるものです。また文章につきましても雄勝の方々のご協力をいただき、弊社で作成しましたので、写真 共々無断転載を禁止いたします。なお、震災復興支援の目的で写真等の使用を希望される方は、弊社までお問い合わせ下さい。


「2013年、創立90周年。新しい知の森へ。」 大東文化大学は、2013年に創立90周年を迎えます。 今後も学生と共に、皆様と共に力強く歩んでまいります。

http://www.daito.ac.jp/research/laboratory/calligraphy/index.html http://www.daito.ac.jp/