2001年2月18日(日)「処刑人」

THE BOONDOCK SAINTS・1999・米・1時間50分

日本語字幕翻訳:林 完治/シネスコ・サイズ(マスク)/ドルビーデジタル


アメリカはサウスボストン。コナー・マクナマス(ショーン・パトリック・フラナリー)とマーティー・マクナマス(ノーマン・リーダス)の兄弟は、バーを乗っ取りにやってきたロシア・マフィアと大乱闘の結果、2人を殺してしまう。FBI捜査官のポール・スメッカー(ウィレム・デフオー)は、天性の鋭い洞察力で兄弟を逮捕・拘留する。しかしさらに捜査の結果、正当防衛が証明され釈放となった。ところが留置場の中で兄弟は、法で裁くことができない悪人を処刑せよという神の啓示を受けていた……。

78点

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 言葉も汚く、ヴァイオレンス満載で、変態で、異常で、でも優しくて、正義感あふれていて、何か今までとちょっと違ったものを感じさせる、そんな映画。ギリギリで不快までいかず、悲しみに満ちているようで、妙に滑稽だったり。こういう作品を作れる監督がこれからの映画界を引っ張っていくのかもしれない。とにかく圧倒された。

 全米各地でそのヴァイオレン故に、あるいは宗教がらみでか、上映が中止されたといういわく付きの映画。一言でいえばアメリカ版「仕置き人」。ドギツイがクールでカッコいいし、主の命によって処刑するのだから「処刑人」よりはせめて「処刑の天使」とかなんとか。「○○人」というのは、お粗末だった「追撃者(Get Carter・2000・米)」とたいしてかわらない発想。ちょっと前では「救命士(Bringing out the Dead・1999・米)」とか、いやいや、やっぱり「交渉人(The Negotiator・1998・米)」のヒットにあやかろうという、日本の映画会社が好きなパターンか。

 もちろん主役の2人がカッコいいのだが、ボクはそれよりも彼らを追いつめるFBI特別捜査官のウィレム・デフォーのエキセントリックで変態チックな演技に拍手を送りたい。とにかく素晴らしい。男とキスをするとき、舌を濃厚に絡ませてるんだもんなあ……。アホな地元警察の刑事とやりあうところがまたおもしろいわけだが。

 しかし何より最大の驚きは、この作品の脚本が25歳の名も無きバーテンの手になるということだ。彼は夜バーテンをやり、「The Boondock Saints」というバントで活動しながら、この脚本を書き上げたという。やがてハリウッドがこの脚本に目を付け、45万ドル(5,200万円相当)の値が付いた(劇場プログラムより)。

 ところが、彼はどの配役も気に入らず、企画が難航したところへ若手のプロデューサーが集まって彼自身の手で映画化することになったのだという。そして完成したのが本作。プロデューサーたちの思惑はピタッとはまった。

 にもかかわらず、監督も務めた脚本のトロイ・ダフィーは映画の勉強を一度もしたことがない、いわばシロート。それなのにすばらしい演出。ハリウッドにありがちなパターンとはちがって、何かクリエイティブな感じがする。事件の現場検証と、実際に起こった内容、これを対比させて描いていく。そしてそれはエスカレートして、いつしか現場検証と事件が同時に進行してしまう。うまいなあ。

 アーノルド・シュワルツェネッガーが「レッド・ブル(Red HEAT・1988・米)」でロシアの警官を演じてデザート・イーグルを使って以来だろうか、ハリウッドでは何かそういうイメージができてしまったらしい。本作でもロシアのマフィアはデザート・イーグル(金の象眼入りツー・トーン・カラー)を使う。

 いちいちカッコいいところを挙げていたらきりがないのだが、あえて1つ挙げておくとすると、処刑するとき聖書の祈りの言葉を口にしながら撃つところ、これがめちゃくちゃクール。いわく……

人の血を流した者は男により報いを受ける
その男とは神に許された者なり
悪なる者を滅ぼし、善なる者を栄えさせよ


 冗談やカッコ付けではなく、本心からこう唱えてサイレンサー付きベレッタM92のトリガーを絞るところにこの映画の良さがある。ただのむなしい殺人ではないのだと。




【ただいま執筆中。少々お待ちください】



 公開2日目の2回目、25分前に着いたらロビーには50人くらいの人が。エッ、なんで? ほとんど予告もTV-CMもやっていないこの映画にこれだけの人が?

 男女比は6:4でやや男性が多い。ハイティーンから20代にかけてが中心で、オジサンは1割ほど。オバサンは非常に少ない。

 PG12指定で、12歳未満はなるべく保護者同伴のこと、ということらしい。しかし、もともと小学生は見に来ていないし、いたとしても「なるべく」ではあってないがごとしの規制。中学生がいたが、ボク個人としては18歳未満、高校生にもありま見せたくはない。しかし、それ以上の大人には、ぜひ劇場でこの映画を見て欲しい。これがバーテンさんの作った映画だ。

 最終的に360席の6.5割ほどが埋まった。銀座のこの劇場はハイ・バックシートなので、前席の人の頭が邪魔にならないのでいい。指定席がないのもストレスがなくていい。


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