2001年8月11日(土)「DENGEKI電撃」

EXIT WOUNDS・2001・米・1時41分

日本語字幕翻訳:岡田壮平/シネスコ・サイズ(マスク)/ドルビーデジタル・dts・SDDS
〈アメリカR指定、世界12カ国で12〜18歳以下の年齢規制〉

ルール無視の強引な捜査と単独行動で、デトロイト市警の21分署から最も治安の悪い15分署へ左遷されたボイド刑事(スティーブン・セガール)は、まず精神的な問題を抱える人のグループ・セラピーに通うことを命じられる。そんな折り、ボイドは偶然、麻薬取引の現場に遭遇して1人の男を逮捕するが、その男は潜入捜査官だった。ボイドは交通整理の任務に回されてしまうが……。

72点

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 「沈黙のテロリスト(Ticker・2001・米)」はウソだったが、こちらは本物。れっきとしたスティーブン・セガール主演映画。それだけのことはあって、合気道アクションが満載の、炸裂。スカッとさわやかってヤツ。言い換えれば、暴力満載ってことだけど。

 特に何を言いたいとかはないのだろうけれど、徹底した悪を憎む姿勢というのは貫かれていて、絶対にあきらめず、悪人はこてんぱんにやっつける。これが見る者をある種、感動させるのだ。

 一生懸命がんばる。とことんやり抜く。これはオリンピックとか、世界水泳とか、世界陸上とか、K-1とかプライドとか、そういうスポーツに共通の要素で、そして世界共通なのだ。それが感動も呼ぶ。

 ただ、気を付けなければいけないのは、こういうスタイルは勧善懲悪を通り越して、ともすれば独善に陥りやすいこと。つまり「ダーティハリー2」ではないが、逮捕する側と処罰する側が一緒になると、過剰な処罰を下してしまいかねない。

 本作も、あやうくスティーブン・セガールの独善になりかかるのだが、コメディの要素を加えることによって、うまくそれを回避している。

 相変わらずセガールの合気道はさえ渡り、鮮やかに悪人を投げ飛ばす。ちゃんとストーリーも練られていて、先が読めないほどではないがどんでん返しが用意されている。

 監督は、これが2作目のアンジェイ・バートコウィアクというポーランドの人。「地下水道(Kanal・1956・ポーランド)」とか「灰とダイヤモンド(Popiol I Diament・1957・ポーランド)」で知られるアンジェイ・ワイダという監督もポーランドの人だったっけ。

 もともとは撮影監督だった人で、つい最近「13デイズ(Thirteen Days・2000・米)」を撮っている。手がけた作品をざっと見ても「追跡者(U.S. Marshals・1998・米)」「デアボロス(The Devil's Advocate・1997・米)」「ダンテズ・ピーク(Dante's Peak・1997・米)」「スピーシーズ(Species・1995・米)」「スピード(Speed・1994・米)」といった蒼々たる話題作が並ぶ。

 思わせぶりな女署長が突然出てこなくなったり、荒削りな印象はあるものの、アクションの撮り方もうまく、ベテラン風のバランスの良いまとめ方を見せる。それが、没個性の感じがする原因にもなっているとしても。

 冒頭、副大統領の「銃で死んだ子供の数は、殉職した警官の数より多い」という銃撲滅キャンペーンでの演説から始まる割には、出てくる銃種も多く、その選択には色気が感じられる。セガールのアイボリー・グリップのコマンダーは本人のチョイスとしても、グロック17、ベレッタM92シルバー、デザートイーグル、USPなどの拳銃、MP5K、スコーピオン、XM177のサブマシンガン類に加えて、ベネリM3ショットガン、そして何と現ドイツ軍最新アサルト・ライフルG36Kカービン(たぶん……H&K UMP45じゃなかったと思うんだけど……)をスクリーン初登場させている。

 車にもちょっとしたこだわりが感じられ、軍用車ハンマーの民間型や、ポルシェにカウンタック(たぶん)なんて車が登場する。

 劇中、監視ビデオの分析から、腕時計で裕福な人間かどうか判断するシーンがあり、「ローレックス?」と聞くのに対して「イッツ・タグ」と答えている。画面には日本で言うホイヤーが映っていたから、アメリカではホイヤーをタグと呼ぶことがわかった。たしかに文字盤には「TAG」と入っているもんなあ。

 アメリカでR指定となったからヤケになったのか、最後のスタッフ・ロールでは出演者の、コメディアンでもあるトム「トゥルー・ライズ」アーノルドと、アンソニー「ビッグ・ママズ・ハウス」アンダーソンによる、下ネタ満載トーク。もちろんTV放送はできないだろう。延々と続くかと思うほど長くそれが続くのは、はたしていかがなものか。日本じゃ子供も見に来ていたし……。

 公開初日の初回、銀座の劇場へ行ったら、ものすごい人だかり。おかしいと思ったら、「赤影」の初日舞台挨拶があるらしい。若い女の子が山のようにいた。そのおかげで地下にある同じ系列の劇場は、案内係が手薄で列が混乱。かなりいいかげんになっていた。特に若い人たちの並び方が酷い。というか並んでいない。たむろしているだけ。

 45分前で20人ほどの列。ほとんどはオジサン以上の中高年。女性はたった1人。高校生くらいが3人。30分前になって30人以上に延びた。

 日本は年齢制限がなく、夏休みらしく下は小学生1人から、中学生も何人か。いいんだろうか。暴力満載だが……。最終的に360席の6割半が埋まったが、ほとんどは中高年のオヤジ。若い男性少し。やっぱりスティーブン・セガールだからなあ。

 ここは指定席がなく、その意味でストレスがない。ドルビー・デジタルに対応しているので、音はなかなかクリア。本作でもサラウンドが効果的に再現され、セリフも聞き取りやすかった。


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