2001年8月20日(月)「ドリブン」

DRIVEN・2001・米・1時57分

日本語字幕翻訳:戸田奈津子 字幕監修:桃田健史/シネスコ・サイズ(マスク)/ドルビーデジタル・dts・SDDS

年間20回開催され、観客の総数全世界で9億人、最高時速400km/hというカートの世界。その年間チャンピオンの座を若きドイツ人ドライバー、ブランデンバーグ(ティル・シュワイガー)と、アメリカ人ドライバー、ジミー・ブライ(キップ・パルデュー)が争っていた。しかし、ジミーはプレッシャーから自分を見失い書けていた。チーム・オーナーのカール(バート・レイノルズ)は、旧友のジョー・タント(シルベスター・スタローン)に協力を求めるが……。

70点

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 本当はF1でいきたかったらしいが、権利関係が難しく、カートにしたということらしい。まあ、いずれにしても、F1なりカートなりのレースカーが一般公道を走るとか、TV中継の車載カメラを超える斬新で生々しい迫力のアングルから描かれるレースシーン以外、こういう話を映画化する意義があるのだろうか、そんな気がしてしまった。エンターテインメント、娯楽なのに、こう感じさせてしまうところがこの映画のことをよく表していると思う。

 スタローン自身が主演、脚本、プロデューサーを兼ねているから実現した企画なのではないだろうか。20回は脚本を書き直し、いろんなところで止めておけといわれて、実現のためかなり苦労はしたらしいけれど。

 本物のレース、本物のカート、本物のドライバーが出演し(ラスト近くに出てきてスタローンと握手するのはジャン・アレジ?)、オール・スター・キャストに近い豪華なキャスト。100億円もかけて、いったい何だったのか。

 いくら実写と見分けがつかないなどと言っても、600カットからのCGを使うと、だんだん高画質映像のゲームに近づいていく気がする。そしてゲームはだんだん映画に近づいて、かくして「ファイナル・ファンタジー」が生まれると。

 ゲーム感覚がつのると、なぜかドラマが希薄になっていく。絵そのものが見せ物になっているからだろうか。たとえば事故の瞬間、当事者は時間が間延びしたような感覚を覚えると言うが(実は私も経験している)、それを表現したショットがあって、クラッシュで空中に車がスローモーションで舞い上がり、その下を普通の速度で他の車が走り抜けていくわけだが、良くできたCGによるSFXショットにしか見えないわけだ。脳が猛烈な勢いで回転しているために、時間が間延びして感じられるという、超常的な瞬間に見えてこない。うーん。雨の視界もまさにゲーム感覚だったし……。

 ピーンと来たところもいくつかはあった。恋いに焦がれるカートの世界チャンピオンに向かって、離婚経験のあるシルベスター“ジョー”が「プライドは捨てろ。愛しているのなら這ってでも行け」とアドバイスする。

 負けがこんであせっているキップ“ジミー”へのアドバイスは「ベストでなきゃダメだと思っているだろう。勝負なんて忘れろ、走ることのピュアな喜びがあれば、たとえ失敗しても自分を見つけることができる」。

 この2つのセリフは、もしかしたら映画界で成功し今へと至る波乱の中で得たスタローンの人生訓なのかもしれない。そこには人生の真実が含まれていて、だからこそ心に刺さってくるのではないかなと。ほんのいろんな場面で、これらのアドバイスは使えるような気がした。
 それでも、結局、一番印象に残ったのは、ドラマの舞台となるチームのメイン・スポンサー、モトローラのロゴだったりする。

 レース前のドライバーの姿がどんなものか、リアルに描かれているとすれば、これは拾いものだったかも。でも、悪い足で10回ジャンプしろってのは「ザ・ダイバー(Men of Honor・2000・米)」のパクリじゃないですかい、スタローンさん。

 公開3日目の平日、初回に行ったら、いくら夏休みとはいえさすがに人が少なかった。20分前についたらすでに開場していた。銀座のはずれにある435席の劇場は、初回全席自由で10人くらいの人が。

 さすがに平日、なのか最近はわからなくなったが、とにかく中高年が中心。どちらかというと老人が目立つ。ただ、夏休みということもあって、親子連れもいて下は中学生くらいから。しかし、学生でもなく、老人でもない中年男性は定休日が平日なのか、営業マンがサボっていたのか。

 最終的に16〜17人になった。かろうじて女性もいて、4人確認した。ほとんど中年層で、だんなに連れられてきたといった感じ。もうスタローンで若い女性は呼べないだろう。

 音響的にはこの劇場は優れていて、もちろんデジタル対応館。6.1chのドルビーEXにも対応しているだけあって、立体感がよく出ている。しかも低音の音圧が高く、体の心までドンと響く感じ。やっぱり映画はこういう劇場で「体感」したい。スタローンの下が絡まったようなしゃべりかたでもクリアにセリフが聞こえた。冒頭にドルビーデジタルの「ヘリ」デモあり。

 ただし、ピント調整は甘く、前半は特にセンター部分にボケが見られ、後半はやや下寄りにボケがあった。やれやれ。


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