2001年9月1日(土)「ロンドン・ドッグズ」

LOVE, HORNOUR & OBEY・1999・英・1時38分

日本語字幕翻訳:石田泰子/ビスタ・サイズ/ドルビー

〈イギリス18歳、フランス12歳以下の年齢規制、アメリカR指定〉

ロンドンで郵便配達員をやっているジョニー(ジョニー・リー・ミラー)は、退屈な毎日から抜け出すため、幼なじみのギャング、ジュード(ジュード・ロウ)に頼んでノース・ロンドンを支配するギャングの一員にしてもらう。刺激を求めるジョニーはサウス・ロンドンを支配するギャング団を挑発するが、どちらのギャングも抗争は望んでいなかった。

72点

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 猥談と、暴力と、イギリス的なちょっと湿ったユーモア。その間にカラオケがある。アメリカばかりかと思ったら、イギリスでもカラオケは人気があるらしい。アメリカと同様「カラオキ」と発音していたが、もう世界共通語なんだなあ。とにかく、ちょっとなじみにくいテーマをミス・マッチ感覚で組み合わせた。印象としては、「私が愛したギャングスター(Odinary Decnt Criminal・1999・英/アイルランド)」や「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ(Lock, Stock & Two Smoking Barrels・1998・英)」に似ている。さすがにイギリス映画ということか。最近、イギリス映画はなんだか元気がいいみたいだ。

 リアルな暴力とユーモアが絶妙なアンサンブルを織りなすのか、不協和音となるのかは、おそらく微妙なバランスなのだと思う。なぜ、こんな難しいテーマに挑戦するのか。製作・監督・脚本を共同でやったドミニク・アンシアーノとレイ・バーディスは「酷い状況の中で人間は滑稽な存在になってしまうのだ」と言っている。

 滑稽とはいえ、ED(佐野史郎さんがCMやってるアレですよ)で悩んでいるギャングってのもなあ。具体的な話が出てきて、話があって、医者もいて、ナマだしなあ。

 出演者のほとんどが、芸名がそのまま役名になっているのも変わっている。演出は、できるだけ地で演じろというものだったらしい。ただ、設定とか与えられないと演じられないタイプの役者さんもいるから、そういう人は違う名前になっているらしい。探してみるのもおもしろいだろう。

 劇中、相手をバカにする言葉として「MUG」が出てくる。調べてみると、イギリス英語では「(だまされやすい)バカ」という意味の俗語らしい。アメリカ英語だと、これが「悪党、ちんぴら」になるのだとか。この言葉を相手の額に書くのだから笑える。

 登場人物がみんな個性的というのも、この映画の魅力。EDに悩むギャングとその奥さん、仲間にまで刺されてしまう不運な男、元特殊部隊員……。

 出演者は「ショッピング(Shopping・1994・英)」というパンクを描いた映画の出演者が多い。ボクはあまり好きではないのだが、たしかに夜、スーパーに押し入って好きなものを強奪する無軌道な若者たちというのは、インパクトはあった。

 いずれにしても、この映画のポイントはブラックなユーモアとハードなギャング映画の組み合わせをおもしろいと思えるかどうかにかかっているだろう。ボクはギリギリOKだった。意見は分かれると思う。

 監督たち2人は出演もしていて、どうやら親友同士で、EDのことで相談する気弱な男と、AK47を気持ちよさそうに連射していた相談を受ける男がそうらしい。銃を撃って、Hシーンをやってと、やり放題だなあ。まあ脚本もプロデュースもやっているんだから、好きにできるんだろうけど。

 公開初日の初回、先着100名にジュード・ロウのビデオ・プレゼントということもあってか、55分前に銀座の劇場に着いたら、すでに開場しており、226席の半分ほどが埋まっていた。こりゃビックリ。しかもその8割以上が20代の若い女性と来たもんだから、2度ビックリ。

 どうにかぎりぎりビデオをゲットしたが、これはやっぱりジュード・ロウ狙いなんだろうなあ。

 定員入れ替え制なので、満席以上になることはないが、30分前で9割方埋まってしまった。すごいなあ。もちろん最終的には100%の入り。オヤジ、オバサンはそれぞれ全体の1割ほどで、若い男性はほとんどカップル来場で単独はいなかった。でも、暴力表現はキツイし、下ネタ満載のギャグも炸裂のアクション作品。イギリス映画でなくて、ジュード・ロウも出ていなかったら、きっと若い女性は来ないでオヤジだらけだったことだろう。

 カラオケが登場するだけあって、サウンド・トラックにはジャミロクワイの曲が使われるなど気合いが入っているものの、音響効果的にはサラウンド感はほとんどなし。クリアで聞きやすく、自然な仕上がりだったが、ちょっと色気がなかったというか淡泊な印象。

 スクリーンのピントはやや甘め。うーん……。


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