2001年9月15日(土)「ブロウ」

BLOW・2001・米・2時03分

日本語字幕翻訳:岡田壮平/シネスコ・サイズ(マスク)/ドルビーデジタル・dts・SDDS

〈アメリカR指定、世界各国で12〜16歳以下制限〉
実話の映画化。1968年、マサチューセッツの田舎に生まれたジョージ(ジョニー・デップ)は親友のトゥナ(イーサン・ラブリー)とともに、カリフォルニアへ出るがやることがなく、知り合ったスチュワーデスのバーバラ(フランカ・ポテンテ)の紹介で、ビーチでマリファナの販売を始める。そして小売りだけでは大きくもうけられないと、メキシコへ飛び、製造元と直接取引をする話をまとめ、バーバラにスチュワーデスの特権を利用して密輸を始める。

72点

1つ前へ一覧へ次へ
 見終わって、暗い気持ちになる。まあ、ある男の波瀾万丈の人生、しかも絶頂からどん底までを2時間以上かけて丹念に描いている。絶頂がハデなだけに、この落差は見る者を打ちのめす。

 一時は全米のドラッグを牛耳るほどまでに成り上がった、世紀の大犯罪者。その犯罪の部分をありまり描かず、夢を追い、愛を求めた憎めないロマンチストのような描き方に後ろめたさまで上乗せされる。こんなセンチメンタルなとらえ方で良いのだろうか。「ゴッドファーザー(The Godfather・1972・米)」のような、ギャング映画でありながら家族の物語りとして描いたというようなところを狙ったのだろうか。でも「ゴッド……」はちゃんと残酷な暴力も描いているのに……。

 同じドラッグを描きながら「レクイエム・フォー・ドリーム(REQUIEM 4 A DERAM・2000・米)」とは正反対に位置する。薬の害はほとんど描かれていない。たった一言「体重が減った?」というくらい。ドラッグに苦しむ人々や、そういう身内や友人を持つ人たちは、この映画をどんな気持ちで見るだろうか。全米にドラッグを広めたのはこの男だというのに。殺人者に等しい、あるいはそれ以上かもしれない重犯罪者が、自分の犯した罪を全く認識していない。娘が刑務所に面会に来てくれないだって、冗談じゃない。

 ただ、その重犯罪者だということを除いて考えれば(だったら実話の映画化にならないし、別な話にすればいいのだが)、夢を追い、愛を求めた憎めないロマンチストの話としては良くできていて感動的だ。ジョニー・デップが演じているからこそ、重犯罪者でありながら憎めない感じがするのだろう。

 それにしても、こういうドラマ主体の作品に、横長のシネスコ・サイズが必要だったのだろうか。先の見えない閉塞感よりも、犯罪者の末路を描いていながら何か開放的でおおらかなのは、このせいかもしれない。

 それにしても、麻薬系のモノの呼び名の多いこと。マリファナは、ポット、グラス、ウィード……などなど。コカイン(コケインと発音)は、コーク、ブロウ……そしてこれが本作のタイトルになっているというわけ。

 素晴らしいのは、いかにも映画らしい場面転換の手法。1台の車が右から走ってきて左へ移動すると、カメラがそれを追ってパンする。切れ目のない1カットなのだが、右で夏の昼間だったものが、左では夜で冬になっているのだ。あやうく見逃すほど自然で、違和感のない場面転換。

 そして、ジョニー・デップがだんだん歳を取っていくメイクも素晴らしい。70年代ファッションがあって、中年になって腹が出てくる。髪型も変わり、サングラスも一時流行ったハーフ・カラーになったりして、時代を感じさせる。

 最初の妻になるはずだったバーバラを演じる女優、フランカ・ポテンテがいい。どこかで見たなあと思っていたら、「ラン、ローラ、ラン(Lora Rennt・1998・豪/米)」のひとだった。イタリア系のドイツ生まれで、本作ではカリフォルニア・ギャルを演じているのだから、無国籍というべきなのか国際派というべきなのか。とにかくきれい。

 初日、初回。50分前についたら、新宿の劇場には10人ほどが列を作っていた。内訳は、30代後半以上のオヤジが3人、オバサン1人。あとはほとんど20代の若い男性。おいおい、麻薬をアメリカに蔓延させた犯罪者の映画だぞ。どちらかといえば地味で、アダルト向きだと思うんだけど。

 その後中学生も現れ、40分前には20人ほどに。さらにジョニー・デップ狙いと思われる若い女性が現れ、20分前に開場した。

 指定席なしの334席の座席は10分前で6割ほどの埋まり具合。男女比はほぼ半々で、老若比は7:3。若い人向けの映画なのかなあ。よくわからん。最終的には朝一から8割ほどの埋まり具合で、なかなか好調の出だしと言っていいだろう。

 イスはいいものに替えられ前後左右も広くなったけれど、音響はあまり改善されていないのかもしれない。特に日本の予告編は音が酷かった。ハリウッド作品の予告編ではちょっと良くなったものの、今ひとつと言わざるをえない。

 初回、なぜか「カロリーメイト スティック」のプレゼントあり。ただ、「ライトシナモン」味で、ボクはこれが苦手。しかもスティックよりビスケット系の以前のタイプのほうがうまいと思うんだけど。もらっておいて文句を言うのもどうかとは思うが。


1つ前へ一覧へ次へ