2001年11月23日(金)「裏切り者」

THE YARDS・2000・米・1時40分

日本語字幕翻訳:松浦美奈/シネスコ・サイズ(マスク)/ドルビーデジタル

〈米R指定〉
レオ(マーク・ウォールバーグ)は親友のウィリー(ホアキン・フェニックス)をかばってクルマ窃盗の罪で服役し、ようやく仮釈放されて帰宅した。まともになろうと、伯父のフランク(ジェームズ・カーン)の地下鉄整備会社に就職する。しかし、まず学校に行って機械工としての腕を磨けといわれ、それを断り派手にやっているウィリーと同じ渉外の仕事をやりたいと言うが……。

72点

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 おお、何という後味の悪さ。暗い、重い、うーん。お金を払ってこんな気分になるのって、どうなのかなあ。バッド・エンドではないにしても、スッキリしない。しかも実話がベースだっていうしなあ。シャーリーズ・セロンはキレイだし、胸まで露出してガンバッテいるけど、この不景気に、こんな話は見たくなかった。まさに不景気だからこそこの話に説得力があるのだろうけれど。

 市の公共交通機関である地下鉄の整備事業に関わる入札汚職。日本のように談合はないが、熾烈なけ落とし競争。現ナマが飛び交うのが当たり前の世界。政治家も、警察も、同業者も社員も何もかも金で動かそうとする。金を稼ぐために。これが昔話ではなく、今の話だというのだからイヤになる。

 残念ながら、この邦題ではこの腐敗したこの閉塞社会の感じが出ない。てっきりもっと アクションを入れた銀行強盗ものとか思ったのだが。倒産寸前の地下鉄修理会社に勤めていて、先が見えず、思い詰めて強盗でも計画するのかと。そして誰かが裏切って完全犯罪が破綻すると。

 まずは原題を確かめろということか。しかし「ザ・ヤード(操車場)」というのも「午前一時サニーサイド操車場 あのとき、何が起こったのか……」というコピーを付けられるとつい違うものを想像してしまう。

 驚くのはキャスティングで、ベテランがずらり。名作西部劇の「エル・ドラド(El Dorado・1967・米)」から活躍を始め、「フリービーとビーン/大乱戦(Freebie and The Bean・1974・米)」などコミカルな役が多かったジェームズ・カーンが仕事を最優先するワーカホリックな継父を好演している。この人、「ザ・クラッカー/真夜中のアウトロー(Thief・1981・米)」に出ていたころドラッグがらみで沈没していたらしいが、どうにかそれを断ち切り「ミザリー(Misery・1990・米)」あたりで復活したらしい。その後「フリーズ/地獄の相続人(North Star・1995・米)」「イレイザー(Eraser・1996・米)」「恋するための3つのルール(Mickey Blue Eyes・1999・米)」と順調に悪役系でしっかりした存在感をアピールしている。すっかり吹っ切れたのかもしれない。

 その妻役を演じているのが、「俺たちに明日はない(Bonnie and Clyde・1967・米)」「華麗なる賭け(Thomas Crown Affair・1968・米)」のフェイ・ダナウェイ。しばらく姿を見ないなあと思っていたら、最近「ジャンヌ・ダルク(Joan of Arc・1999・米/仏)」や「トーマス・クラウン・アフェアー(Thomas Crown Affair・1999・米)」で元気な姿を見せていた。おばあさんになっていたけど。

 もうひとり、主人公レオの母を演じたのが「エクソシスト(The Exorcist・1973・米)」のエレン・バーステイン。つい先頃「レクイエム・フォー・ドリーム(Requiem for a Dream・2000・米)」で、見違えるほどの汚れ役を演技じて健在ぶりをアピールしていたっけ。やっぱりこうしてみるときれいな人なんだなあと。

 公開初日、初回、45分前に着いたら新宿の劇場前には20代後半の男性が1人。それが30分前になって10人ほどになった。1/3は20代で、あとはオヤジとジジイ。25分前に開場して、最終的には305席に40人ほど。女性はそれでも10くらいいた。


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