2001年12月8日(土)「アトランティス 失われた帝国」

ATLANTIS : THE LOST EMPIRE・2001・米・1時35分

日本語字幕翻訳:戸田奈津子/シネスコ・サイズ/ドルビーデジタルEX・SDDS・dts

〈米PG指定〉
1914年、若き言語学者のマイロ(声:マイケル・J・フォックス)は博物館のボイラー係で生計を立てていた。そして、祖父が残してくれた手がかりを元にアトランティスが実在したことを証明する証拠を探す資金を出してくれるよう、ずっと理事会に掛け合っていたが誰一人として取り合ってくれなかった。そんなある日、怪しい女ベルガ(声:クラウディア・クリスチャン)が現れて、お金を出したいと言ってる人がいるという。

71点

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 冒頭、海面すれすれに飛ぶ飛行マシーン。あれ、これって宮崎アニメの大傑作「天空の城ラピュタ(1986・徳間/東映)」じゃないの? 雰囲気も羽ばたき飛行機のフラップターにそっくり。そういえば話自体も失われた帝国を探しに行く話。「ラピュタ」も父が果たせなかった伝説の空飛ぶ城を探す話。時代背景も「ラピュタ」が複葉機と蒸気機関の時代なのに対して、こちらは1914年(もちろん複葉機の時代)。出来は天地ほども差があると思う。「ラピュタ」とは比べものにならない。

 見ていくほどに類似点が続出する。「ラピュタ」は空中に浮いているが、「アトランティス」は地中に浮いている。「ラピュタ」は飛行石のペンダントを首に下げているし、「アトランティス」の姫キーダが首に下げているのはアトランティスのパワーを秘めているクリスタル。ラスト、「ラピュタ」を守るのは飛行石に反応して動き出すロボットたちで、「アトランティス」では水の中から起きあがってアトランティスを守る像(やっぱりロボットだろう)、古代文字と奇妙な模様、そしてどちらもそれらを軍人たちがそれを盗もうとする(よく見ると使っているライフル銃まで似ている。「ラピュタ」はリー・エンフィールドとモーゼルを混ぜたようなオリジナルなものなのに対して、「アトランティス」はズバリ、イギリスのリー・エンフィールド。アメリカの話なのでスプリングフィールドM1903の方が自然なのだが、イギリスの傭兵とかいう設定か?)……。ウォルト・ディズニー生誕100周年記念作品がこんなことでいいのだろうか。

 あまりの類似点の多さに愕然とするほど。それを臆面もなく、ぬけぬけとタイトルと登場人物を変えただけで世界公開する図々しさ。そういえば「ライオン・キング(The Lion King・1994・米)」もモロ手塚治虫の「ジャングル大帝」だったもんなあ。ラストにドリカムの曲を使っているのは日本版だけかもしれないが、当然といえば当然だったのだ。

 ひとつだけ興味深かったのは、主人公が軍人に対して「盗んだものを返せ」と言うと「歴史的な発見を盗んだものだからと言っていちいち返していたら、世界中の博物館から展示物がなくなってしまう」と答えるところ。本当に大英博物館などカラになるかもしれない。

 例によって大作アニメに有名俳優が声を担当するのはもう定番。本作でも病気療養中のマイケル・J・フォックスが元気な声を主人公に当てているし、あの「ロックフォード氏の事件メモ」や「」のジェームズ・ガーナーが狡猾な軍人を、「ヒドゥン(The Hidden・1987・米)」のセクシーなストリッパーを演じたクラウディア・クリスチャンが鉄の女ヘルガを、Mr.スポックことレナード・ニモイがアトランティスの年老いた王をそれぞれ演じている。これは豪華。

 公開初日の4回目、これが字幕版の初回と「ぴあ」にあったので行ったら、実際には字幕版は3回目から。やっぱのあてにならない。結局は当日朝、新聞で確かめるのが一番確実なのだ。あとは直接劇場に電話して聞くか。

 それで、ビルの3階にある劇場に75分前に着いたら、長蛇の列。オッと思ったら地下にある「ハリポタ」上映館の列。3階まで続いているとは。そんなにおもしろい映画かなあ。

 それはともかく、75分前は速すぎると思ったが、ロビーにはすでに2〜3人が。60分前になったら10人くらいになった。まずまずの出足だろう。ほとんどは20代のカップルで、理由はよくわからない。ドリカムがエンディングを歌っているからか。

 実はドリカムは日本版だけで、アメリカ版などではマイヤが歌っている。「アトランティス」の広告では日本初などと言っていたが、こういうことはよくある。別に本作だけではない。アメリカ公開版やインターナショナル版にも使われているのなら、そりゃ日本初でビックリするけど。もしこれが本当に「日本初」ならアカデミー作曲賞を受賞した教授こと坂本龍一はなんなんだろう。「ラスト・エンペラー(The Last Emperor・1987・仏/香/伊/英)」や「スネーク・アイズ(Snake Eyes・1998・米)」はどうなる。歌手ではというのなら、「ストリート・ファイター(Street Fighter・1994・米)」のチャゲ&飛鳥はどうだ。ラルクアンシエルは一瞬だが「ゴジラ(Godzilla・1998・米)」で全世界に聞かれたし、「ファイナルファンタジー(Final Fantasy・2001・米)」では英語でエンディングを歌っている。こんな言い方はドリカムを貶めることになると思うが、いかがなものか。

 15分前に開場したときで305席の7割の入り。最終的に8割が埋まった。若いカップルがほとんどで、やや女性が多いだろうか。

 アメリカではデジタルで製作されているので(日本のアニメも同様だが)、アメリカではDLP上映もあり。日本では劇場の関係(DLP上映できる劇場が少ない)で35mmフィルム上映のみらしい。残念。


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