2001年12月9日(日)「カラー・オブ・ペイン 野狼〈オオカミ〉」

野狼・2001・日/香・1時40分

日本語字幕翻訳:表記なし/ビスタ・サイズ/ドルビーデジタル


殺し屋の龍一(澤田謙也)は、香港で日本のヤクザを暗殺するが、その際、頭部に銃弾を受けいつ死ぬがわからない状態で、ときどき激しい頭痛に悩まされていた。そんなとき、銀行強盗に巻き込まれ、妊婦に代わって人質を申し出るが、逃走の途中、金はいらないから自分を仲間に加えろと言い出す。

70点

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 「ホークB計画(EXTREME CRISIS・1998・香/日)」に続く澤田謙也主演映画の第2弾。一部のキャストがそのせいか雰囲気が似ている。ただ「ホーク……」が澤田謙也の製作・原案・主演に対して、本作は原案・脚本・監督を岡村隆史の「無問題(モウマンタイ)」をプロデュースを手がけたサム・レオンがやっているという。

 わかりにくいのは、根っからの悪党の話なのか芯は善人の話なのか明確になっていないためだ。当然のことながら、根っからの悪人では観客は感情移入ができない。といって、設定から言って全くの善人では話が成立しない。バランスが難しい。最初は凶悪に見えて、実はナイーブでいいヤツだとわかってくる、というのがわかりやすいパターン。観客は1度だけ、しかも短時間しかその映画に関わらないわけだから、わかりやすくないとダメなのだ。作る側は頭の中にある構想の段階から、何度も繰り返し話し合い、書いて、見て、聞いているから問題はない。観客はそうではないと。主人公がどっちつかずの中途半端だから、観客も感情移入できずに最後まで宙ぶらりん。

 主演の澤田謙也は「ホーク……」とまったく同じ感じだが、なかなか好演。英語、広東語(?)、日本語と3カ国語を操り、その雰囲気はかつての日活アクションのように無国籍風。体は鍛え上げられて、筋骨隆々。射撃のスタイルもなかなかのもの。連射もうまい。ちょっとクェンティン・タランティーノが入っている(水平撃ち)けれど、まあ流行だからしようがないか。彼は、劇中ずっとグロックを使う。でも狙撃にオーストリアのAUGアサルト・ライフルを使うのはどうなのだろう。AUGがよくないと言っているのではなく、他にもっとふさわしい銃があるだろうにということだ。あまりに「ニキータ(Nikita・1990・仏)」のイメージが強すぎないか。やたら引き金に指をかけず、ちゃんと人差し指を外に出して伸ばしているところなど、ほとんどの人が気づかないと思うが大切なのだ。

 敵役は、二枚目なのにずっと悪役を演じ続けているテレンス・イン。「ホーク……」でもそうだったし、最近では「バレット・オブ・ラブ(不死情謎・2001・香)」でもキレまくって存在感をアピールしていた。彼が使うのはシルバーに輝くベレッタM92のそっくりさん、タウルスPT92だ。

 コミカルなスパイス的存在は日本でも有名なサム・リー。「ジェネックス・コップ(特警新人類・1999・香)」では刑事役だったが、こちらは犯人役。しかし彼はとことんの悪役ではなく、とまどいながら悪事を働いている感じ。日本語も少し操って、ファンの期待を裏切らない。黒のタウルスPT92を使う。

 拳銃の名人で射撃のインストラクーもやっているドッグを演じるのは、トニー・ホー。ガバメントを使うが、かなり練習したらしく、ダブル・タップ(素早く2発撃つこと)がうまい。構え方も現代的なコンバット・シューティング・スタイルで、いい先生が付いていたものと思われる。もちろん、主役の澤田謙也はそれよりずっと速く銃を抜くわけだが。

 残念ながら、後藤理沙はストーリーにはまったく必要なかった役。ちょっとしか出演していないし、なくてもまったく映画の印象は代わらないだろう。グロックの本物のステージガンを撃ったという意味では貴重だが、誰かが無理して出したかったとしか思えない。うーん。

 一方、引退して指令を出すだけの男を演じた國村隼はいい味を出している。ちょっとしか出ていないが、印象に残る。あえていなくてもいい役だが、存在感が違う。撃たれて倒れ、指先しか見えていなくても、ちゃんとそこで演技しているからスゴイ。

 公開初日は舞台挨拶と入場プレゼントがあるというのでパス。映画がたいして好きでもない人たちがたくさん来て混雑するだけで、映画を楽しむことができない。興行的には舞台挨拶は大切なのだろうが、観客の立場から言うと、ちっともありがたくない。座れない可能性まで出てくるのだ。

 そこで、2日目の初回、35分前についたらオバサンと若い女性の2人がいた。モーニング・ショーがあって(といってもスタートが10時20分だからモーニングじゃないと思うが)12時40分初回というスロー・スタート。

 15分前に開場したときで8人ほど。若い女性5人にオバサンと30代らしき男性2人という感じ。最終的には18人ほどに。男性7人、女性11人、ほとんど20代で、30代が少しといったところ。オヤジもちょっといたが(自分も含めて)、このくらいの人数はありがたい。銀座のこの劇場はどの席からも前席がじゃまになるのだ。最近は字幕が下に出るから、さらにいらいらがつのる。

 見やすいとはいえ、2日目でこの入りは悲しいものがある。たぶん宣伝不足ではないかと思う。もっとつまらない映画に人が入っているのだから。しかし、普段指定席さえないこの劇場に、「ぴあシネマリザーブシート」の張り紙が。うーん。初日初回は別として、この混み具合では必要ないと思うが……。2,000円だよ2,000円!! 普通の前売りって1,300円じゃなかったっけ?


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