2001年12月2日(日)「ブレス・ザ・チャイルド」

BLESS THE CHILD・2000・米・1時47分

日本語字幕翻訳:森泉佳世子/シネスコ・サイズ(レンズ)/ドルビー・dts

〈米R指定〉
1993年、離婚してひとりで暮らしている看護婦のマギー(キム・ベイシンガー)の家に、突然ヤク中となった妹ジェニー(アンジェラ・ベティス)が、父親のわからない生後9日の女の子の赤ちゃコーディを連れてきて置き去りにした。マギーはコーディを本当の自分の子のように育てたが、6年後、1993年生まれの子供だけを狙った連続殺人事件が発生する。

74点

1つ前へ一覧へ次へ
 よくある悪魔と神の戦いもの。神の子の復活を阻止しようとする悪魔と、それをさせまいとする人間が戦うわけで、これ自体に新しさは何もない。問題は、それをいかに本当らしく説得力を持って描くか。そして神と悪魔という遠い存在の話ではなく、身近な話として観客に捉えさせるかがポイントなのだ。そして、本作は、それにまんまと成功している。面白い。そして怖い。アメリカじゃ評価は低かったようだが。

 このネタは特に世紀末の1999年から2000年にかけてよく作られた。「エンド・オブ・デイズ(End of Days・1999・米)」「レザレクション(Resurrection・1999・米)」「スティグマータ 聖痕(Stigmata・1999・米)」「ロスト・ソウルズ(Lost Souls・2000・米)」などと同じ系。だから評価が低かったのかも。

 それらと決定的に違うのは、いわば神の奇跡、癒しと、悪魔の邪悪な行い、蛮行などを交互に織り込んでいること。普通は悪魔の蛮行をたっぷり見せておいてから、最後に奇跡が起こって神が悪魔に勝つというパターンが多い。ところが本作は、キリストが行ったとされる奇跡に近いちょっとした超自然現象を初めから見せ、もっと神と悪魔の闘いを明確に打ち出している。ただ、神の奇跡が癒しとか気持ちの問題にちょっとプラスした程度のささやかなものなのに対して、悪の行いは死という致命的なもので、力の差が歴然としているのだが。

 主役は、アカデミー賞ものだったかどうかは別として「L.A.コンフィデンシャル(L.A. Confidencial・1998・米)」で素晴らしい美しさを振りまいていたキム・ベイシンガー。ちょっと歳を取った気がするが、相変わらず美しい。この人だから成立していたのかもしれない。一生懸命子供を守ろうとする姿が感動的だ。

 ちょっとだが、「アダムス・ファミリー(Adams Family・1993・米)」や「スリーピー・ホロウ(SLEEPY HOLLOW・1999・米)」のコケティッシュなクリスティーナ・リッチが重要な役で出てくる。いい役もらったなあ。好感度高し。

 実にイヤらしい悪魔の手先を演じるのは、傑作「ROCK YOU!【ロック・ユー!】(A Knight's Tale・2001・米)」でも憎まれ役を好演していたルーファス・シーウェル。ギョロ目がいいです。

 監督はチャック・ラッセルという人で、「エルム街の悪夢3(Nightmare on Elm Street 3・1987・米)」で注目され、その後「ブロブ(The Blob・1988・米)」、「マスク(The Mask・1994・米)」と話題作を手堅くまとめ、ついにあの「イレイザー(Eraser・1996・米)」を撮る。いつも書くことだが、ホラー映画をちゃんと怖く撮れる人というのは必ずと言っていいほど大成する。

 6歳のコーディを演じるのはホーリストン・コールマン。彼女がかわいいので、応援したくなるし、彼女の起こす奇跡で心がイヤされる。なかなかの演技派なので、今後、大物女優になるかもしれない。それか、マコーレー・カルキン君みたいに子役でつぶれてしまうか……。

 わりとドロドロしたお話でありながら、さわやかな感動がある。クリスマス前に見ると、聖なる気持ちでクリスマスを迎えることができるのではないだろうか。まさにこの時期にピッタリの公開だったと思う。

 公開2日目の初回、40分前に着いたら1人。20分前に開場した時でどうにか15人くらい。意外と人気がない。広告不足か。

 最終的に360席に20人程度の入りは寂しすぎ。ほとんどは30代後半以上のオヤジで、オバサンがかろうじて2人くらい。しかし、もっと入って良い映画だと思う。IMDbの評価は低いとしても、あえてオススメしたい。

 12月16日生まれの人は、免許証や保険証など証明できるものがあれば、入場料金が1,000円になるなどの特典あり。


1つ前へ一覧へ次へ