2001年12月15日(土)「スパイ・ゲーム」

SPY GAME・2001・米・2時08分

日本語字幕翻訳:戸田奈津子/シネスコ・サイズ(レンズ・上映は70mm?)/ドルビー・dts・SDDS
〈米R指定〉


1991年4月14日、CIAのエージェント、トム・ビショップ(ブラッド・ピット)が中国の蘇州刑務所に侵入し逮捕された。アメリカ大統領の訪中が間近だったことから、CIAの上層部はトムの元上司、ちょうど引退の日を迎えたネイサン・ミュアー(ロバート・レッドフォード)を呼び、事態の収拾を図ることにする。しかし、明朝8時に処刑されることが決まっていた。

76点

1つ前へ一覧へ次へ
 非常にリアルなスパイ・ストーリー。時代設定がベルリンの壁崩壊直後くらいで、まだ中国とアメリカが国交を正常化していない時点の話だけに、緊張感が否応なく盛り上がる。もちろん、政治情勢を知らなくても十分楽しめる作品だ。話の筋はかつての教え子、弟子を助けようとする男の話なのだが、仕掛けというか伏線が複雑に絡み合い、ちょっと気を抜くとわからなくなってしまうところがある。

 中国蘇州、香港、オーストラリア、タイ・バンコック、ベトナム、ドイツ・ベルリン、ベイルート……まさに世界を股にかけるスパイの世界。それでも前半は、スパイの心得やレッドフォードがスコッチのダブルを注文すると、ブラビが「スパイはマティーニじゃないのか」と言うなど、エンターテインメント・ネタがあるが、次第に虚々実々の過酷な現実のスパイの世界に入っていく。そして、それはさらに政治と大きく関わってきて、国際情勢、国と国の力関係などが絡んできて、血なまぐさくなってくる。

 指示を出すレッドフォードは一発勝負で仕掛けをするのではなく、常に次善の策を用意しながら、ブラピには指示した方法しかないと思わせて実行させる。万が一ブラビが失敗しても、ちゃんと押さえの手があるのだ。ここにリアリティがある。

 しかし、やがてブラピはそれに気が付いて嫌気がさし、レッドフォードの元を離れていく。ここにあまり心の絆は感じられないのだが、なぜか設定は深い絆ができていることになっている。ここが弱い。

 紅一点のエリザベス・ハドレーを演じるのが、キャサリン・マコーマックという基本的には美しい女優さん。ここではNGOで何年も支援活動しているというしたたかな女性を、生活に疲れた感じで演じているのでオバサン臭くなっているが。もともとはメル・ギブソンが監督・主演を兼ねた感動作「ブレイブハート(The Braveheart・1995・米)」で注目された人。はっとする美しさだった。最近では「テイラー・オブ・パナマ(THE TAILOR OF PANAMA・2000・米)」で美貌のイギリス大使館員を演じていたっけ。

 レッドフォードを無視し小馬鹿にしているすかし野郎エージェントを、実にイヤらしく演じているのは、イギリス出身のスティーブン・ディレーンという人。テレビで活躍してきた人で、この作品の前には「私を愛したギャングスター(ORDINARY DECENT CRIMINAL・1999・独/アイルランド/英/米)」に出ているらしいが、ボクは印象に残っていない。でも、今後注目だろう。かなりの演技力と見た。この作品がブレイクのきっかけになるかも。

 初日初回、混雑を予想して60分前に劇場に行ったら前売り券の列に2人、当日券の列に5人。当日券の方が多かったのは意外だったが、こんなに少ないとは。レッドフォードとスパイでもっと政治ドラマみたいなもの、社会はドラマを予想して敬遠したのか……。

 しかし、並んでいた人のほとんどは20代の若い人たち。中高はどうしたんだろう。その後もあまり延びず、40分前で両方の合計が20人ほど。30分前に開場したときでさえ、前売り30の当日20というところ。ようやくオジサン、オバサンが増え、全体の1/3に。

 初回のみ全席自由で、指定席の12席×5列と、ぴあ11席も座ってOK。1,044席の半分くらいが埋まった。大人向けのエンターテインメントなんだから、大人は「ハリポタ」よりこっちだと思うんだけど。

 ドルビー・デジタルの洞窟デモあり。

1つ前へ一覧へ次へ