2001年12月29日(土)「バンディッツ」

BANDITS・2001・米・2時8分

日本語字幕翻訳:古田由紀子/シネスコ・サイズ(マスク)/ドルビーデジタル・dts・SDDS
〈米R指定〉


オレゴン州立刑務所から、白昼堂々ジョー(ブルース・ウィリス)とテリー(ビリー・ボブ・ソーントン)の二人が脱獄した。大追跡団をとっさの機転でかわすと、着るものを手に入れるため、豪邸に侵入。そして、2人で夢のリゾート・ホテルを作るため、銀行を襲う計画を立てる。まず鍵を手に入れるため支店長宅に侵入し、支店長を人質に取るとそのまま泊まり、翌朝一緒に出勤して金庫を開けるという大胆な計画。やがてその手口から、彼らは「お泊まり強盗」と呼ばれることになる。

73点

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 おもしろい、笑えるアクション・コメディ。しかもピカレスク。犯罪者が主人公でありながら、最後まで観客を惹き付けて放さないのは、やはり彼らが根っからの悪人ではないということ。直接的な被害が出るのは、豪邸から着るものを盗むときだけで、銀行はすべて保険に入っているので、被害額は全額保険で充当される。しかも、銃を持っていて撃つのだが、誰も傷つけない。その上、人が良く、知性も高い。「アート・オブ・ウォー(The Art of War・2000・米)」のように、ラオツー(老子)や孫子の兵法などをときどき口ずさむ。憎めない悪党たちなのだ。

 そして、こういう大人のおとぎ話に欠かせないのは、魅力的な女。男2人には女1人でしょう。コテコテの三角関係。男たちは親友同士で、女はどちらも等しく愛していると。名作「明日に向かって撃て!(Butch Cassidy and The Sundance Kid・1969・米)」、傑作「冒険者たち(Les Aventuriers・1967・仏)」、それを手本にした傑作「狼たちの絆(縦横四海・1991・香)」でも、三角関係はないが「プランケット&マクレーン(Plunkett & Macleane・1999・英/チェコ)」みんなそう。

 うまいのは、それら3人のキャラクターがそれぞれ個性的に生き生きと描かれていること。ファンタジーだからこそ3人がリアルでないと、映画全体が成立しなくなってしまう。この辺がうまいと。

 笑えるシーンもたくさん用意されている。2人は銀行を襲うたびにベンツだとトヨタだと違うクルマを調達し、じつにヒドい変装を披露してくれる。落ち武者みたいになって、ニール・ヤングのレコード・ジャケットみたいだと言われるほど。

 家出する主婦を演じるケイト・ブランシェットもいい。台所で鍋をドラムにして熱唱するボニー・タイラーの“Holding Out For A Hero”は絶品。ジョーとテリーが黙ってしまうほどの、音痴な“Walk On By”も笑わせてくれる。

 オジさん観客には大ウケ、のはずがノリの悪い客ばかりで、笑っていたのはボクだけ。しだいにもりあがっては行ったのだけれど。

 楽しみのもうひとつは、素敵な曲の数々。やっぱりこれもオヤジねらいでしょ。ボニー・タイラーの“Holding Out For A Hero”、U2の“Beautiful Day”、アレサ・フランクリンの“Walk On By”、グローバー・ワシントンJr&ビル・ウィザースの“Just Two Of Us”などなど。ただ、すべての曲がサウンド・トラックCDに入っているわけではないので、念のため。

 公開初日の初回、40分前についたら10人ほどの人がいた。こんな年末ギリギリでも結構見に来る人がいるんだなあ。しかも、全員、中高以上。女性はたった1人。やや老人が目立つか。

 30分前で20人くらい。15分前にようやく開場したときには、50人くらいになっていた。意外に人気があるよう。若い人と女性は極端に少ないけど。それにしても年末は開場が遅いのか。普通、30分前に開くのに、寒いぞ。しかも、初日の初回から指定席があるという不可解。年末は特別なんだろうか。10席×5列×左右2列と、ぴあ10席×1列×左右2列が、ぽっかり空いたまま上映が始まった。うーん、やれやれ。

 最終的に1,189席の4割ほどしか埋まらなかった。年末ということを考えると、入ったほうか。たぶん35歳以下と女性ともに1割程度。音響設備は素晴らしく、音質もサラウンド感も申し分なかった。


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