日本語字幕翻訳:寺尾次郎/ビスタ・サイズ(1.66)/ドルビーデジタル・dts
〈仏U=制限無し〉
1830年のフランスはパリ。かつて犯罪者で、いまはニミエ(ムサ・マースクリ)と2人で探偵社をやっているヴィドック(ジェラール・ドパルデュー)がある事件を捜査中に殺害された。彼から直接自伝の執筆を頼まれていたという若者エチエンヌ・ボワッセ(ギヨーム・カネ)が現れ、自伝を完成させるため、そしてヴィドック殺害の真相を明かすため、ヴィドックの足跡をたどることになる。
|
なんなんだろう、この画質。どう見てもビデオに見える。フィルムで撮っていないのではないかとさえ、思えてしまう。特殊効果(主に合成)が随所に使われていることから、そのデジタル処理の結果なのかもしれないが、どうもデジタル臭いと言うより、ビデオ臭いのだ。音はデジタルで、非常に迫力あるが、なんだか映像がついていかない。しかも、画像のゆがむ広角レンズを多用した(というか、ほとんどが広角)ショットの連続は疲れる。テレビ・サイズで見るのならいいかもしれないが、大画面で周りが暗い劇場で見ると疲れる。(その後の調べで、ハイビジョン・カメラと判明。こんなものなのか) ヴィドックっていうのは、てっきり謎の殺人者、ガラスの仮面を着けた男のことだと思っていた。予告編ではそんな扱いだったし。そしたらそいつを追いつめる探偵の方がヴィドックだったとは。そうか、同じフランス映画でクリストフ・ガンズ監督の「ジェヴォーダンの獣」と間違えたんだ。うーん。 改めてチラシを見ると、フランスに実在した探偵で、凶悪な犯罪者から警察官となり、その後探偵になったのだという。なんでもヴィクトル・ユーゴーの小説「レ・ミゼラブル」の主人公ジャン・バルジャンのモデルはヴィドックであるらしい。時代はちょうど、フランス革命を経て、ナポレオン帝政があり、1830年7月革命でフランス王家のブルボン家の人々がフランスを去った頃。この辺が映画でも微妙に描かれている。 映画の構成としては、アヴァン・タイトルで主人公が死ぬという挑戦的なもの。タイトルが出た後、物語の振り出しに戻り、主人公の足跡をたどって冒頭のシーンへと向かっていく。特に目新しい手法ではなく、むしろありふれたものと言ってもいいだろう。ラストのどんでん返しは予想がつかなかったが、惜しいことに驚きもなかった。それがストーリーにあまり影響を与えないのだから、悪く言えば何でもいいわけで。 タイトルはバックに当時の新聞をうまくコラージュしており、ヴィドックがどういう人物かをここで語る。ただ、ボクはてっきり鏡の男がヴィドックだと思っているから、いい加減に見ていて、最初ストーリーが理解できず失敗した。なんで、事細かに新聞の見出しに字幕が付くんだろうとは思ったが、まさかそれが主人公の説明だったとは。 主演はますます太ってきた大男、ジェラール・ドパルデュー。吹き替えを使っているにしても、アクション・シーンもどうにかこなしていた。そろそろ危ないのではないだろうか。本作より前に見たのは、確か「102(102 DALMATIANS・2000・米)」だったような。 若い作家を演じているのは、どこかで見たことあるなあと思ったら、レオナルド・デカプリオが主演した「ザ・ビーチ(THE BEACH・2000・米)」でフランス人カップルの男の子をエチエンヌ演じていたギヨーム・カネ。 監督はピトフとなっていて、シェールとかマドンナみたいに名字も名前もないのかと思っていたら、本名はジャン・クリストファー・コマーといって、かなり有名な視覚効果マンだった。これが初監督作品というわけ。SFXマンとしてはあのジャン・レノのドタバタ・コメディ「ビジター(Les Visiteurs・1998・仏)」、ジャン・ピエール・ジュネ監督の「ロスト・チルドレン(La Cit Des Enfants Perdus・1995・仏)」、リュック・ベッソンの歴史大作「ジャンヌ・ダルク(Jeanne d'Arc・1999・仏/米)」などを手がけている。なるほど、だから本作はほぼ全編SFX使いまくりなのね。本人は、もうフィルムでは撮らないとまでいっているんだとか。画質さえ劣化させなかったら、文句はないですけど……。 公開初日の初回、50分前で8人。全員たぶん30代以上。あらら、意外。45分前に14人になって、うち女性が5人。20代と思しき人は3人ほど。35分前にエスカレーターが動き出し、30分前に開場。この時点で25人ほどの行列になっていた。 初回のみ全席自由で、435席の銀座の劇場は、10席×3列×左右2列の指定席も自由。最終的には6.5割ほどの入り。なかなか好調な出足といっていいだろう。 隣の席にフランス人の一家が座った。一番下の女の子は小学校1年くらいだったが、すごく難しい発音を難なくペラペラと……そうじゃなくて、フランスでは(日本でも)年齢制限なしなので、こんな小さな子も見に連れてきている。でも、刃物でノドをかき切るシーンはあるし、肉に刃が食い込んでいるし。いいのかなあ。 |