2002年3月30日(土)「ブラックホーク・ダウン」

BLACK HAWK DOWN・2001・米・2時間25分

日本語字幕:手書き、下・松浦美奈/シネスコ・サイズ(ARRI)/ドルビー・dts・SDDS
(米R指定、日本は?)

http://bhd.eigafan.com/
(動かしすぎで、遅い。普通で良いのに……)


1983年10月、部族闘争で混迷を続ける東アフリカのソマリアで、治安維持のために派遣されていた国連平和維持軍に対して、ババルギディル族のアイディード将軍率いる民兵の一団が宣戦布告、パキスタン兵24人を殺害した。アメリカのタスク・フォース司令官ガリソン少将(サム・シェパード)は、ババルギディル族の指導者を人質にする作戦を計画、特殊部隊のレンジャーとデルタ・フォースからなる混成部隊を編成した。部隊は3日午後3時32分に作戦を開始する。それは30分から1時間で終了する簡単なミッションのはずだった。しかし、民兵は予想を超える強力な武器で武装しており、ついにMH-60ブラック・ホーク・ヘリコプターが撃墜される事態に追い込まれる。

78点

1つ前へ一覧へ次へ
 怖い。ひさびさに怖い戦争映画。観客がその戦場に置かれたかのような錯覚を覚えるほど、リアルで生々しい場面の連続。全編2時間25分の長丁場の中、ほとんどが戦闘シーンという構成ながら、まったくダレさせないし、ドラマがあって、胸が熱くなる。思わず涙が……。これが実話で、ほとんど演出を加えずに再現されたものとは信じられないほど。あの事件で、こんなに凄惨なことが起こっていたとは。

 ただし、これは劇映画であってドキュメンタリーではないのだから、計算され尽くした演出が加えられている。あくまでも作り事ではある。リドリー・スコット監督らしいサイド光は控えめにされているものの、恐ろしい中にも美しい絵は、随所にあふれている。ボクはこれでいいと思う。お金を取ってみせる商業映画なのだ。「タイガー・ランド(TIGERLAND・2000・米)」とは対局にある映画。

 すべてが真実ではないにしても、ソマリアで何があったのかを知ることはできる。30万人もが亡くなったとはいえ、他国の内乱に軍事力で干渉するとどういうことになるのか。敵をなめた軍隊はどういう目に遭うのか。

 投入されたのは2つの陸軍特殊部隊。1つは主力部隊投入の前に敵地の偵察や監視を担当するレンジャー部隊。そしてもう1つは、人質の誘拐や救出、対テロ戦などを担当するデルタ・フォース。レンジャー部隊は規律を重んじ、パンフレットによれば「正規戦を戦うエリート部隊」だという。一方デルタ・フォースは、個々の判断を尊重する「不正規戦を戦うエリート」だと。この2つの部隊が一緒に作戦を遂行したのだから、最初から無理はあったのだろう。

 画面で見分けるには、ヘルメットを見るとわかる。通常のフリッツ・タイプにサンド迷彩カバーが掛けられているのがレンジャー、SWAT系のスケルトン・タイプの黒がデルタだ。銃は、M16A2を装備しているのがレンジャーで、伸縮ストックで後のM4カービン(軍制式名)となるM727やM733(正式名ではなくコルト社の生産ライン名)を装備しているのがデルタ。

 さて、映画で胸を打つのは、アメリカ軍がどんなことがあっても、1兵たりと戦場に置き去りにしないというお互いの誓い(教義)を必死に守ろうとすること。兵士は戦場に投入されてしまえば、良いも悪いも言っていられない。戦うしかないのだ。そして、何かが起きたら戦友が守ってくれる、後を引き継いでくれると信じられるから、身を危険にさらすことができるのだ。それが、よく伝わってくる。「家族に、オレは最後まで勇敢に戦ったと伝えてくれ」といって息を引き取る兵士が涙を誘う。どうして、こんなことになったのか。映画を見終わったら、友人やパートナーと話すことがたくさんあるだろう。これはそういう映画だ。

 アメリカ兵160人に対して数千人のババルギディル族民兵という圧倒的な差がありながら、15時間も戦闘してアメリカ側の死者19名、負傷者73名というのは驚くべき少なさだろう。ババルギディル族民兵側は1,000名以上の戦死者が出たといわれていのだから。

 ハイテク装備はもちろんとして、1つにはアメリカ軍が特殊部隊という選ばれた者たちだったということと、もう1つには防弾チョッキが標準装備品となっていたことが、損害の少なかった理由としてあげられている。もし、相手をもっと良く知っていて、動きにくいからと防弾チョッキに挿入する追加装甲板を抜いていなかったら、もっと被害は少なくてすんだかもしれない。

 登場する人物名などは、すべて実在のもの。これが本当にあったのだということが、見る者を戦慄させる。ラスト、多数の民兵に見送られるように町から逃げ出すアメリカ軍部隊の姿が象徴的だった。

 公開初日の初回、時間を間違えて75分前に着いたら誰もいない。おかしいと思ったら早すぎ。55分前になって前売りの列に6人、当時の列に3人。よかった。オヤジ3人と若い人6人。女性は0。まあ、戦争映画だからなあ。

 40分前くらいになって、ようやく女性客も現れた。前売り40人の当日30人のうち、オバサン2人の若い女性3人という感じ。まあ、戦争映画だからなあ。

 25分前にようやく開場したが、その時点で待っている人はおおよそ100人くらいいただろうか。老若比はほぼ半々になっていた。女性の比率は変わりなし。初回のみ全席自由で、12席×5列、ぴあ8席も自由。

 最終的に、下は中学生くらいから、上は白髪の老人までいたが、中心は大学から中年男性。しかし暴力表現はかなりきついので、高校生以下に関してはいかがなものかという気もするが。アメリカでは18禁(R指定)。あいかわらず日本は性表現に厳しく、暴力表現にゆるい。1,044席の5割が埋まったのは、まずまずの出足だろう。


1つ前へ一覧へ次へ