日本語字幕:写植、下・根本理恵/ビスタ・サイズ(1.85、ARRI)/dts
1973年、韓国朴大統領政権下の諜報機関KCIAによって、政敵に当たる金大中(チェ・イルファ)を拉致・暗殺する計画が立てられた。夕刊トーキョーの記者、神川(原田芳雄)は金大中の信頼を得て、日本においてたびたび単独インタビューしていたが、その彼に金大中の居所を知らないかと、陸上自衛隊の三佐、富田(佐藤浩市)が接近してくる。
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実話を元にしたフィクションだと、最初に字幕の断り書きが出る。主要な人物が実名で登場するので、いろいろと問題があるのだろう。それが30年前のことだとしても、人を殺したり、主権を侵害したり、とんでもない話なのだから。 当時、大きな話題になった金大中事件の真相はたぶんこんなだったのだろう。その説得力がこの映画の最大の魅力。観客を惹きつけて、2時間超という長丁場をだらけさせずに見せてくれる。ぐいぐいと引っ張っていく。邦画ではひさびさの骨太作品。 ただ、どうも自衛隊の陸幕監部第二部別班というのが説得力がない。実際こうだったらしいが、この描き方では疑問がわく。自衛隊はこんなことはやらないだろうという。公安ならここまでのことをやるという感じがするし、実際にやっているのではないか。シロート的に見ると、全体の構成にお色気を追加したいのと、あのラストを撮りたいがために付け足した役なのではないかと思ってしまう。 この女性を演じているのは、てっきり「ソウル(SEOUL・2001・日)」で通訳をやっていたキム・ジヨンかと思ったら、違う女優さんで、ヤン・ウニョンという人。韓国はこういうおしとやかな美女が多いのね。ただ、美人なので存在感はあるものの、この映画に、そしてストーリーにほとんど必要ない人物。あのラストで、それまで社会派として積み上げてきた重厚さを、いともあっさりと単なるラブ・ストーリーヘ変質させてしまう。 映画としては、感情的に盛り上がって終わるようになっているので、否定するつもりはない。しかし、ほかの終わり方があったような気はする。やっぱりいっそ女性を排除してしまえば……。 元ロッカーの白竜がヤクザの親分としてチラッと登場するが、これもあまりしっくりこない。とってつけたような感じ。なんでこんな小さな役に有名な俳優を使うんだろうか。逆効果だと思うが。 銃にはあまり関心がないようだ。最初、KCIAのキム・チャウン(キム・ガプス)はベレッタのM1934なんていう骨董品を携帯しているが、ステージガンを発砲するシーンになるといつのまにかP7になっている。そのP7の作動性能はかなり良かった。 公開5日目の初回、平日なので安心してゆっくりと出て25分前くらいに着いたが、それでも並んでいたのは4人だけ。大学生か定年後の夫婦といった感じ。あるいは定休がちょうど土日以外の人か。 15分前にくらいに開場し、10分前で15〜16人で、女性はほとんどオバサンで5人ほど。最終的に40人ほどになり、意外と平日でも映画を見る人が多いことがわかった。うち、女性と若い男性はそれぞれ5人ほど。題材的にオヤジが見る映画というわけか。 音はオリジナルがdts(CDをフィルムとシンクロさせる方式)なので、すこぶるいい。新宿の劇場の音響システムもなかなからしく、クリアでヌケが良かった。ただしdtsには対応していない。シネセゾン渋谷は対応しているので、上映フィルムがdtsならもっといい音が聞けるだろう。 |