2002年8月24日(土)「ウインドトーカーズ」

WINDTALKERS・2001・米・2時間14分

日本語字幕:手書き下、松岡幸治/ビスタ・サイズ(パナビジョン)/ドルビーデジタル・dts
(米R指定)

http://www.foxjapan.com/movies/windtalkers/index2.html
(いきなり音が出るので要注意)

1943年、ジョー(ニコラス・ケイジ)はソロモン諸島で部隊が全滅、自信も重傷を負って病院に入院することになった。快復すると前線へ出ることを希望し、サイパンへ派兵される。そんなとき、日本軍は破ることができない暗号として、太平洋戦線で使われていたナバホ語をベースにした暗号を専門とするナバホ・インディアン2名がジョーの部隊に配属されてくる。

74点

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 予告編では日米の若者があの戦闘で散ったというような謳い方をされていたが、ジョン・ウーが監督を務めているだけあって、男の友情物語だった。つまり部隊は太平洋戦線でもヨーロッパ戦線でもどちらでもよかったわけで、話の中心となるナバホ語ベースの暗号を話す兵士というのが太平洋戦線だったから、敵は日本だったとそういうことのようだ。

 戦闘シーンはリアルで迫力があって恐ろしい。史実であるためか、ジョン・ウー監督も押さえ気味の演出で、例によってスロー・モーションは多用しているものの、過剰なカッコいい演出はしていない。

 銃声が大きく、弾着はものすごい勢いでハデにはじけ、銃の恐ろしさや圧倒的な暴力の感じが伝わってくる。大砲の弾着も、全部ではないものの、弾け散る感じが痛そうでとてもいい。

 状況が状況(なにしろ戦争という究極の状況)なだけに、男たちの友情は一段と鮮烈になっている。だから逆に言えば、友情を描くのは(描ける人にとっては)簡単なこと。ジョン・ウーだったら、「プライベート・ライアン」くらい強烈で泣かせる映画にもなったはずだ。いい出来であることを承知で、あえてもっと上を狙って欲しい、いや期待してしまう。ジョン・ウーならもっとスゴイ映画でできたはずだという感じが少しした。

 物語は創作だが真実に基づいている。実際、アメリカ軍は太平洋戦線においてナバホ語ベースの暗号を使っていた。すでに日本のパープルという暗号は開戦前から解読され、真珠湾攻撃まで筒抜けだったという。対してアメリカはそれをはるかに上回る強力なシガバ(M-143-C)という暗号があったわけだが、機械を使うこの暗号では一刻を争う最前線では遅すぎて使っていられなかったのだ。それで話し言葉で使え、全世界でナバホ族以外に29人にしか知られていないと言うナバホ語が選ばれたという。日本軍は結局このコードを破ることはできなかった。……と、こんなところにも興味が行くと、話は映画の枠を超えていく。(「暗号解読」サイモン・シン著/青木薫訳/新潮社に詳しく載っている)

 男の友情をメインに据えたため、そして戦場での話であるため、女性を登場させながらも、女性は全くと言っていいほど顧みられない。「悪いことしましョ!(Bedazzled・2000・米)」や「A.I.(A.I.・2001・米)」でその美貌を余すところなく披露してくれたフランシス・オコーナーさえ振ってしまうのだ、ニコラス・ケイジは。戦場に定期的に届けられる手紙に1回も返事を書かない。それどころか破って捨ててしまいさえする。

 うーん、どうなんだろ。これって、ニコラス・ケイジの役は同性愛者ってこと? もしくは性的不能になってしまったとか……。

 海兵隊はいつも最初に戦場に駆けつけ、上陸作戦を決行する。そして橋頭堡を確保する。そのあとに陸軍が進軍してくるわけだ。だからいつも海兵隊にはとびきりの危険がつきまとう。海兵隊出身の芸能人はだからそれを自慢にする。たとえばスティーブ・マックイーン、ジーン・ハックマン、スコット・グレンなどが海兵隊出身。

 その海兵隊の物語なので、戦いもいっそう熾烈だ。そして、装備に多少の自由があってニコラス・ケイジはサンダース軍曹のように(役名はエンダーズ伍長、のちに軍曹)トンプソン・サブマシンガンを装備している。ほかにも定番のM1ガーランドやM1カービン、ガバメント、BARも出ているけれど、ショットガンがあったり、火炎放射器(ジャイアント・ジッポーと呼んでいる)があったりするところがリアルでいい。手榴弾も安全ピンを抜いてレバーを解放するとちゃんと導火線の煙が出る。ニコラス・ケイジはちゃんと撃たないときはトリガー・フィンガーを伸ばしているし。新兵たちは銃口に埃よけの銃口カバーをつけているし。

 飛行機はなんだかCGくさかったが、戦車は米軍がM3スチュアート、M4シャーマン(A4っぽい)、日本軍は複数の九七式中戦車っぽい戦車で、なかなかがんばっている。が、戦闘シーンがいいのは最初の日本軍に包囲されて全滅するシーンと(もちろん日本軍は悪役、ジャップだ)、ラスト近くの日本人村での戦闘くらいか。メリハリというのは必要なんだろうけど……。

 公開初日の初回、55分前についたら6人が待っていた。中年2人、中学生3人、20代1人といったところ。みなもちろん男性ばかり。45分前になると人が増えだして、20人ほどに。中高年が全体の1/3ほどで、意外に若い人が多い。女性はわずかに1人のみ。

 30分前になったら、かなり列が長くなった。50人くらいか。中高年が半分ほどに。しかも明らかに老人が目立ちだした。第二次世界大戦ものはだいたいこうだ。女性は2〜3人のみ。

 25分前に開場し、初回のみ全席自由。10席×4列×左右2+10席×2のぴあ席もすべて自由。最終的には1,288席の5.5割が埋まった。

 ついでながら、この日から「マトリックス2 リローデッド」と「007 ダイ・アナザ・デイ」の劇場予告が始まった。どちらも超カッコいい。絶対見たい!!……って、これミーハー?

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