日本語字幕翻訳:手書き下、岡田壮平/シネスコ・サイズ/ドルビー・dts・SDDS
〈米R指定〉
ジャンキーのジョーイ(ジェームズ・フランコ)は、麻薬売買のトラブルから、売人のピカソを刺し殺してしまう。警察はピカソの死体を発見し、ジョーイが犯人であることを突き止めるが、捜査に当たっていたビンセント・ラマーカ刑事(ロバート・デ・ニーロ)が14年前に別れた息子だった。 |
世界で一番強力な軍隊を持ち、世界で一番強い国がアメリカ合衆国なのかもしれないが、そのアメリカは麻薬によって崩壊するかもしれない、そんな感じを強くさせる映画。 全世界を震撼させた9/11の同時多発テロでさえ、アメリカの結束を強めこそすれ、テロリストが狙ったであろうことなどほとんど達成できなかった。しかし、麻薬はアメリカを根底から腐らせ、倒してしまうかもしれない。こんなにも当たり前のように麻薬が一般生活にまで浸透し、未来を作るべき若者が崩壊していってしまっているとは。 なんと暗い映画なんだろう。絶望の映画ではないけれど、現実は甘くないんだと、顔の前に突きつけてくる、そういう映画。「レクイエム・フォー・ドリーム(Requiem for a Dream・2000・米)」の悲惨さに近い。 その厳しさ、悲惨さは、本作は実際の事件にインスピレーションを得て作られたことからきているのかもしれない。うーん、現実は小説よりも奇なり、か。「子供達が変えていってくれる。子供達が未来を作るんだ」の言葉通り、バッド・エンディングではなく救いがあるけれど、このエンディングでいいか? 最大の問題点と思えるのは、のっけで描かれるジョーイのジャンキーぶりが、徹底したダメ野郎で、まったく感情移入できないこと。反感どころか、殺意さえ覚える。こんなヤツ、のたれ死のうが、射殺されようが、死刑になろうが、まったく自業自得だと。同情の余地などない。 観客の中ではすでに冒頭でストーリーが完結してしまっているから、広がっていかない。また、かつて繁栄を誇り、いまはすっかり落ちぶれて寂れてしまったロング・ビーチが舞台になっており、その街の別名が、タイトルの「海辺の街(City by the Sea)」だ。なるほどね。「容疑者」はなあ……。 ロバート・デ・ニーロはこのところ刑事物づいていて、自分のプロダクションで作るというので公募しているというウワサの脚本も刑事物とジャンルを定めているらしい。ホントかね。 監督のマイケル・ケイトン・ジョーンズは、第二次世界大戦秘話「メンフィイス・ベル(Memphis Belle・1990・米)」、マイケル・J・フォックスのコメディ「ドク・ハリウッド(Doc Hollywood・1991・米)」、ロバート・デ・ニーロが出た「ボーイズ・ライフ(This Boys Life・1993・米)」、スコットランドの英雄を描いた「ロブ・ロイ/ロマンに生きた男(Rob Roy・1995・米英)」、リメイクしたらしい「ジャッカル(The Jackal・1997・米)」などで知られる。どちちらかというと職人監督という感じだろうか。 公開3日目の初回、50分前に銀座の劇場に着いたら、5人が並んでいた。うち中高年カップルが1組。35分前に開場したとき、前売りに15人、当日券15人といったところ。ほとんどは中高年で、若くて20代後半。男女比はほぼ半々だった。 指定無しのぴあ2席も、初回は全席自由。この劇場も、ようやく前売り券の当日券との引き替えというのがなくなってスッキリとした。老若比は若者が10%といった感じ。男女比は6対4まで回復した。最終的に648席の5割ほどが埋まった。 |