日本語字幕翻訳:手書き下、稲田嵯裕里/シネスコ・サイズ(マスク)/ドルビーデジタル・dts・SDDS
〈米PG-13〉
ロサンゼルス市警のベテラン刑事ミッチ(ロバート・デニーロ)は、署長の指示により制服警官のトレイ・セラーズ(エディー・マーフィー)と組んで、捜査の現場ドキュメンタリー番組に出演することになる。しかし、全く相性の悪い二人は、ことごとくぶつかってばかり。 |
おもしろい。期待していなかったのが良かったのか、笑って、ハラハラして、スカッとして、マスコミへの皮肉もチクッと、OKでしょう。 「ナッティ・プロフェッサー(The Nutty Proffessor・1996・米)」以降、最近ヒットに縁のないエディ・マーフィ主演ということで、あまり期待していなかったことも確か。しかし、ロバート・デ・ニーロが出ると画面が締まるし、女優の大物レネ・ルッソもいるだけで艶やかな雰囲気が出る。 おもしろく仕上がったのは、たぶんエディ・マーフィを押さえ気味で使っているからだろう。完全なコメディにしてしまわず、デニーロのポリスもののいいところを巧妙に取り入れている。シリアスでクールなデニーロと、明るくノリのいいエディ・マーフィの掛け合いが素晴らしい。TVの刑事物とは違うんだ、本物はこうだと教える内容が本当にリアル。銃の構え方も今のスタイルだし、いい加減に作っていないところがいい。おそらく本物の刑事がアドバイザーとして付いているのだろう。 ガン好きに興味深いのは、制服警官のエディ・マーフィが、俳優になりたくてカメラ・テストを受けているシーン。ここで、エディ・マーフィはショルダー・ホルスターを着けているのだ。最近あちこちでしゃべっているので、皆さんご存じだろうが、公的法執行機関ではショルダー・ホルスターの使用を禁止している。暴発事故が起きると同僚を撃ってしまうというのがその理由だ。 で、やっぱりこの映画もミーハーか、と思っているとこれは単なるカメラ・テストで、それが終わるとエディ・マーフィはさっさと制服に着替えてしまう。刑事(ディテクティブ)ではなく警官(コップ)だったのだ。ちなみに使用銃はベレッタM92。口径9ミリだ。 一方、刑事のロバート・デニーロはもちろんヒップ・ホルスターを使っている。最初のカットだけホルスターを使わずにズボンのベルトに直接挿しているが、これはどうしても次のギャグにつなげるため、銃を持っていることをエディ・マーフィに気付かせる必要があったからだ。ホルスターに入れていたら、外からはほとんどわからない。使用銃はS&Wのたぶん.45ACP(11.4ミリ)口径のモデル4505。実際FBIなどでも通常の9ミリより威力のあるものを推奨しているという。このへんがまた興味深い。 ロバート・デニーロがヒップ・ホルスターを使っている証拠に、あとのほうで、カッコ良くスポーツ・カーのボンネットを滑り降りてくるエディ・マーフィにデニーロはこう言うのだ。「本物の刑事はTVドラマみたいに車のボンネットには乗らない。ホルスターで傷が付くからだ」エディ・マーフィが振り返ると、10円玉でひっかいたような傷が50センチくらいガーッと付いているわけ。 他にも刑事物好きにはたまらない仕掛けがたくさんある。スタスキー&ハッチじゃないんだ、というセリフがあったり、ダーティ・ハリーの名セリフがあったり、アメリカのTV番組で「レスキュー911」だったかの事件番組のホストを担当しているウィリアム「スタートレック」シャトナーが出てきたりと、壁に「セルピコ」のポスターが貼ってあったり、そりゃもうサービス満点(気が付かなきゃわからない些細なことだけど)。 そして決定的なこのセリフ。「麻薬は現場でナメたりはしない。もし青酸カリとかだったらどうするんだ」。アメリカの警察ものでは必ず袋に指をつっこんで麻薬かどうか確認する。そしてそれを真似した日本のTVや映画でもナメる。しかし、確かに青酸カリとかだったらどうするんだろう。コメディのようでいて、この映画は鋭いところをついて来る。侮ってはいけない。 新兵器として悪漢たちが使う銃がまた凄い。オート・ショットガンを改造したもので、カタチはH&KのG36に似ているが、12番径で、通常のプラスチックのシェルではなく、強度のある真ちゅう製のシェルを使っている。設定では劣化ウラン弾まで発射できるといっている。「なんだ、ありゃ、大砲か」というセリフが笑わせてくれる。ガン・ショーの会場での撃ち合いというのもまたスゴイ。 「シャンハイ・ヌーン(Shanghai Noon・2000・米)」はどうかと思うが、トム・デイ監督は今後注目かもしれない。 そうそう、冒頭、出てくるオモチャのようなデザインの銃は、たぶん「トリプルX(XXX・2002・米)」でも出ていた南アのベクターではないだろうか。それともベレッタの9000Sか。 公開2日目の初回、15分前に付いたらさすがにもう開場していた。新宿の763席の劇場は10席×4列×左右と、ぴあ席10席×左右とも全席自由。 最終的には3.5割ほどの入りで、男女比はほぼ半々。年齢層的には、中年1/3、高齢者1/3、20代1/3という感じ。もっと入ってもいい映画だと思うけどなあ。 ラストにNG集あり。見逃さないように。 |