日本語字幕翻訳:手書き下、岡田壮平/ビスタ・サイズ/ドルビーデジタル・dts・SDDS
〈米PG-13指定〉
不景気のため職場を半日勤務とされたジョン・Q・アーチボルト(デンゼル・ワシントン)は、銀行に妻デニス(キンバリー・エリス)の車まで抵当に取られるような状態。そんなにある日、9歳の1人息子マイク(ダニエル・E・スミス)が野球の試合中に倒れ、ホープ記念病院に運ばれる。そして心臓移植しないと助からないと宣言されてしまう。しかし、保険は半日勤務では制限を加えられ、移植手術を受けることができないと言う。借金や寄付でありったけの現金を集めるが足りない。病院側はそれでは息子さんを退院させると言い出す。追いつめられたジョンは、拳銃を手に病院を乗っ取ることにするが……。 |
こういうことって日本でもあると思う。そのときにこんな大胆な行動に出る人がいるだろうか。日本では年金などのシステムが破綻していると言われて久しい。他人事ではすまされない問題かもしれない。ちょっとシドニー・ルメットの「狼たちの午後(Dog Day Afternoon・1975・米)」にも似ている。 アメリカでの評価は今ひとつだが、デンゼル・ワシントンの魅力炸裂の一本と言っていいだろう。設定としては徹底的に暗い、うんざりするような話だが、ハリウッド的な希望にあふれる結末と、カラッとしたけれんみのない演出、デンゼル・ワシントンのキャラクターのおかげで「チェンジング・レーン(Changing Lane・2002・米)」とは正反対の映画に仕上がっている。唯一うんざりするのは、妻を演じたキンバリー・エリス演技がうますぎるせいか、彼女がヒステリーを起こすと演技と知りつつ腹が立ってしまう。彼女はこれがメジャー初出演なんだとか。 デンゼル・ワシントンが病院を占拠すると、すぐに人質救出チームHRTが出張ってくる。彼らも特殊部隊で、SWATと似たり寄ったり。最近の傾向として、人質の消耗を考慮してすぐに突入する傾向がある。本作でもHRTはすぐに突入しようとする。この辺がリアル。 おもしろいのは、人質となる連中が個性的で、人間くさいこと。密室ドラマになり、事件は、起こした本人や警察の予想を超えた展開を見せる。次から次へと何かが起こり、デンゼル・ワシントンはすべてに対処しなければならない。逃げようとするヤツ、子供が生まれそうになったり、人質同士がけんかを始めたり、急患が救急車でやってくる。さあ、どうする。 そしてストックホルム症候群。人質たちは事情を知ると、だんただんデンゼル・ワシントンに同情し、協力的になっていく。ほらほら、波乱の予感がするでしょ。 さらに、警察署長には選挙が迫ってきており、票集めのため一刻も早い解決を図ろうとするわけで、これがまたおもしろい要素になっている。このレイ・リオッタ演じるイヤらしい署長とことごとく衝突するのが、正直一徹といった感じのロバート・デュバル演じる交渉人グライムス。あの最高におもしろかった「交渉人」とも違った交渉人で、これはこれで興味深い。比べてみるとおもしろいかもしれない。 監督はニック・カサヴェテス。そう、「グロリア(Gloria・1980・米)」の監督にして、ジーナ・ローランズの夫だったジョン・カサヴェテスの息子だ。今後活躍してくれそうだ。蛙の子は蛙ってか。 公開2日目の初回、新宿の大劇場には45分前で、前売り5人、当日6人。男女比は半々で、ほとんどが20代。えっ、こういう人間ドラマは中高年の独壇場じゃなかったの? 若手の有名俳優が出ているわけでもないのに。 20分前に開場し、この時点で前売り30人の当日25人といったところ。男女比も年齢構成もほとんど変わっていない。やや高年齢層が増えただろうか。12席×5列+ぴあ席3もすべてて自由なのに、入場時に係員が間違って白いカバーのかかった席以外にお座りください、なとどといってしまって、最初はみんなあけて座っていたが、あとで訂正が入ったとたんみんな移動した。 最終的に1,044席に4割ほどの入り。でも、この映画はもっと注目されて、人が入ってもいいと思うんだけどなあ。12月7日から「マイノリティ・リポート」が始まるため、たった2週間の上映とは……。 |