2002年11月30日(土)「フレイルティー 妄執」

FRAILTY・2001・米/独/伊・1時40分

日本語字幕翻訳:手書き下、岡田壮平/ビスタ・サイズ/ドルビーデジタル・dts・SDDS

〈米R指定〉〈日本PG-12指定〉

http://www.uipjapan.com/frailty/

ある雨の夜、テキサス州ダラスのFBI本部に1人の男(マシュー・マコノヒー)が訪ねてくる。対応したウェズリー・ドイル捜査官(パワーズ・ブース)に、男は連続バラバラ殺人の犯人を知っていると、真剣に話し出す。弟が殺したのだと。最初、まったく信じていなかったウェスセリーだが、話を聞くうち次第に信じ始める。

71点

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 なんと、俳優のビル・パクストンが、もっとも損な役と監督を兼任した異色作。情けない役とか、セコイやつとか、異常な役が多い(本作ももちろんそう)ビル・パクストンだが、やっぱり才能のある人なんだ。かなり怖い。激しく血が飛んだり、頭が飛んだりというハデなシーンはないのだけれど、アメリカでは成人映画(Hなヤツではなく)に指定されている。日本は12歳未満は父兄の同伴が必要という規制。まあ、この映画を小学生だけで見に来るとは思えないが、日本は暴力表現に甘い傾向がある。

 さて、内容だが、なかなかしっかりしたサスペンスというかスリラーに仕上がっている。ちょっとホラーという感じもするが、実際に刺されたりという残酷シーン(スプラッター)はない。それらを直接描かずに。観客に想像させる手法で怖がらせるのだ。ここは抜群にうまい。ただ、オリジナリティというよりは、誰かうまい監督の真似とか、定石という手を使っているような印象はある。ソツなくまとめたというか。アメリカでの評価はなかなかいい。

 しかし、物語が始まって、15分程度でラストが見えてしまうのはどうだろう。主人公がFBI捜査官に打ち明け話をして話が込み入ってくると、これは最後に捜査官を誘い出すのだろうなと。で、どんでん返しがあるわけだが、これは物語の構成上そうなっているだけで、どんでん返しがこの映画の売りではない。感じ方はそれぞれだろうが、自分が信じるものを疑おうとしないで(妄執)突き進んでしまう恐怖こそが売りなのではないかとボクは思った。しかも、それを幼い自分の子供にまで強要してしまう恐ろしさ。そこがR指定の最大の原因だろう。

 ただし、そこに限定していないところが、この映画のおもしろいところ。神の啓示を受けたと自称する人は多い。極端な話、十戒を授かったモーゼとかムハンマド(モハメッド)も、だいたい宗教はそういうところから始まっていることが多い。この映画では、妄執としながらも、掲示をあえて否定してはいない。むしろ、ひょっとしたら本当かもという立場。惨殺する相手が悪魔のようなことをやったという映像も付けられている。ただし、それすらも否定も肯定もしていない。

 SFXを駆使して父が見たという天使も描かれているが、どこか神々しくない。つまり、幅を持たされている。本当の天使なのか、それをかたる悪魔なのか。天使だと思いこんでいる相手が悪魔だったとしたら。このへんがこの映画をおもしろくしている。

 マシュー・マコノヒーの子供時代を演じるのは、「ドメスティック・フィアー(Domestic Disturbance・2001・米)」でジョン・トラボルタの息子を演じていたマシュー・オリアリー。マコーレー・カルキンと間違えた少年だ。弟役のジェレミー・サンプターもかわいく、なかなかの演技だったことから、今後注目かもしれない。なんでも実写版「ピーター・パン(Peter Pan・2003・米)」でピーター・パンを演じるらしい。

 公開9日目の初回、35分前に着いたらオヤジが1人。午前中の1回目は別な映画を上映しているらしく、入れ替え上映となっていた。20分前に入れ替えとなった時点では6人。オヤジ3人、20代後半が3人。

 最終的にオバサン数人と、20代女性もちょっと増えて、およそ30人。やっぱりオヤジが中心。イビキかいていたヤツもいたけど。


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