2003年4月12日(土)「デアデビル」

DAREDEVIL・2003・米・1時43分

日本語字幕:手書き下、 林 完治/シネスコ・サイズ(マスク、スーパー35)/ドルビー・dts


〈米PG-13指定〉

http://www.foxjapan.com/movies/daredevil/
(全国の劇場案内、上映スケジュールもあり)

八百長試合を拒否したボクサーの父(デヴィッド・キース)をギャングに殺されたマット・マードック少年(イコット・テラ)は、事故で視力を失っていたが、そのかわり超人的な感覚を得ていた。そしてニューヨークのヘルズキッチンの正義を守るため悪と戦うことを誓う。やがて大人になったマット(ベン・アフレック)は、昼間は弁護士として弱者の側に立って戦い、夜は犯罪を犯そうとしているものや法で裁くことができない悪人と戦っていた。

74点

1つ前へ一覧へ次へ
 面白い。ビジュアルも新鮮で、カッコいい。香港のアクション・チームが仕掛けるアクション・シーンは息を飲むほど。ただ、複雑な話を1時間43分に詰め込んだため、駆け足になってちょっと食い足りないところがある。そして暗い。ダーク。アメコミの傾向ではあるのだけど、過去が暗く、主人公はみな重い十字架を背負っている。

 まずアメコミのオリジナル漫画が出て、パパパッと何コマか変わるとマーベル・コミックのロゴがドカーンと出る。いったん暗くなると、暗やみにいくつものビルの窓明かりが浮かぶ。と、この内のいくつかの明かりだけがズームするように出てきて、暗やみに浮かぶ点字になる。さらにこの点字がモーフしてアルファベットになって、スタッフ・キャストの文字になるという凝った見せ方。「スパイダーマン」も凝っていたからアメコミ原作の映画の流行りかと思ったら、単にタイトル・デザインがどちらも、あのイマジナリー・フォースだったということだった。相変わらずイマジナリー・フォースはセンスが良い。今回のデザインはカリン・フォンという人らしい。

 主人公が盲人とこうことで、サウンド・デザインは特に凝っている。こういう映画こそ、デジタル・サウンド対応のいい音の劇場で聞きたい。この音響と、音によって周りの状況を把握するというモノトーンのビジョンがまた秀逸。手でものをたたいて音を発生させ、その反響から形を読み取ると言うコウモリのような能力。これを具体的に絵で示されると、妙に説得力がある気がする。雨が降ってくると、雨粒が当たる上の方からサーッと形が浮かんでくるところなど、ホントに盲人の人はこんな感じなのではないかと思ってしまう。

 場面転換にも工夫が見られる。現在の主人公の顔がアップになり、ストップ・モーションになると目だけが同じで若い頃の自分の顔にバトンタッチするとかだ。うーん、クール。気に入った。

 セリフも十分練られていて、洒落ている。第2弾目くらいの予告編から使われていたがマードックがエレクトラを軟派するとき、カンフーの技自慢になってマードックは言う「名前を聞いたヤツはみんなこうなるのか?」。彼女が答えて「電話番号を聞いてみたら?」うまいなあ。そして、やっと彼女の名前を聞き出してそれを仕事のパートナーに「エレクトラ・ナチオスだ」と言うと「メキシコの前菜か?」だって。笑わせてくれる。

 気になったのは2カ所。まず街を牛耳る陰の支配者キングピンことフィスクが怖くないこと。あの名作「グリーン・マイル」のもう一人の主人公ともいうべきマイケル・クラーク・ダンカンが演じているのだが、設定自体もそれほど残虐ではなく、彼自身の人の良さみたいなものがあふれていて、ちっとも敵役に見えないのだ。カジュアル・セックスを公言するコリン・ファレル(「ジャスティス(Hart's War・2002・米)」「タイガーランド(Tigerland・2000・米)」)演じる雇われ殺し屋のブルズ・アイの凶悪さ(地?)とはあまりにも対照的。これだったらボスより雇われ人の方が強いじゃん。

 そして、いい感じだったマードックと、「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン(Catch Me If You Can・2002・米)」の一晩限りのレオさまの相手を務めた行きずりの女性を演じたジェニファー・ガーナー演じるエレクトラ・ナチオスの関係。こんな終わり方で良いの? それとも先があるの?

 デアデビルがビルの上からダイブするイメージというのは、どうも押井監督の「攻殻機動隊」の冒頭のシーンのような気がするんだけど、考えすぎだろうか。

 公開8日目の初回、初回以外全席指定となる銀座の劇場は、40分前で30人ほどの行列。意外なことに中高年以上が多い。たぶん40代と50代が一番多いのではないか。女性の方がやや年齢は若く、30〜40代という感じ。男女比的には女性が1/4くらい。

 35分前に開場、初回のみ全席自由で17席×1列の別料金指定席も自由。やっぱり朝は得。ぴあ席なし(全席指定なのだから当然か)。この時点で50人ほど。最終的に654席に4割の入り。20代が圧倒的に少ない。アメコミなのにどうしたんだろう。下は父親に連れられた小学生もいたが、ハゲの方が目立っていた。

1つ前へ一覧へ次へ