Malavita


2013年11月18日(月)「マラヴィータ」

MALAVITA・2013・米/仏・1時間51分

日本語字幕:丸ゴシック体下、松浦美奈/シネスコ・サイズ(マスク、Arri)/ドルビー・デジタル、DATASAT、SDDS

(米R指定、日PG12指定)

公式サイト
http://www.malavita.jp/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

フランスのノルマンディー地方の片田舎の小さな町に、アメリカ人の一家、ブレイク家の4人が引っ越してくる。実は父のフレッド(ロバート・デ・ニーロ)は引退したマフィアのボスで、組織から命を狙われているためFBIの証人保護プログラムにより名前を変えて引っ越しを繰り返していた。FBIのスタンスフィールド(トミー・リー・ジョーンズ)からは「できるだけ目立たないようにして地域に溶け込め」と言われ、FBIの監視チームも付いていたが、家族全員がストレートに感情を表現するタイプで、しかも気が短いため、ことあるこどにトラブルを引き起こしていた。そしてひょんなことから、居場所が組織にバレてしまう。

74点

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 IMDbでは6.4点だが、ボクは面白かった。ハマった。リュック・ベッソン脚本とは思えないほど緻密な構成と、バイオレンスとコメディの、そしてリアルとファンタジーの絶妙なバランス。キャラも良く立っている。暴力満載な割に後味もすっきりさわやか。自身で監督するヤツは気合いが違うというわけか。でもリュック・ベッソンってもう監督しないんではなかったの?

 原作はあるが、設定はいかにもありがち。FBIの証人保護プログラム、殺し屋、嘘で固めた近所付き合い……そして銃撃戦。使い古されたプロットでも、味付けを変えて現代風に焼き直せば面白い作品が作れるというお手本のような作品。しかも、製作総指揮にマーティン・スコセッシを迎えたことで、ロバート・デ・ニーロ、ミシェル・ファイファー、トミー・リー・ジョーンズという名優をキャスティングでき、それだけで見たい気にさせる。

 そして細かなエピソードがいい。いわゆる善良な一般市民でも、小悪党はいるもので、フランス語で悪口を言うスーパーの店員とか、ボロうとする配管工事屋とか、学校のいじめっこ、女の子とやって逃げる男……そういうやつらを周りのことなど気にせず思いついたままやっつける痛快さ。そしてフランス人とアメリカ人のギャップ、ロバート・デ・ニーロ本人によるギャング的パロディのギャグに、製作総指揮のマーティン・スコセッシの「グッドフェローズ」(Goodfellas・1990・米)までネタにする仕掛けのおもしろさ。しかもラストは家族全員が銃を持って戦うと。

 原題の「マラヴィータ」は飼い犬の名前だが、イタリア語で「裏社会」という意味なんだとか。なるほど。でも最近「マラヴィータ」だとか「ビザンチウム」とか「エリジウム」というような似た系のタイトルが多くないか。

 元マフィアのボス、父のフレッドはロバート・デ・ニーロ。まあ、色んな作品に出ている人で、ギャング関係でいえば「ゴッドファーザーPART II」(The Godfather: Part II・1974・米)や「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」(Once Upon a Time in America・1984・伊/米)、「アンタッチャブル」(The Untouchables ・1987・米)、「グッドフェローズ」ということになるだろうか。どれもかなり怖い。その流れで本作がある。コミカルだが、ベースは怖い人。最近えせ超能力者を描いた「レッド・ライト」(Red Lights・2012・西/米)に、存在だけで怖い役で出ていた。

 その妻マギーはミシェル・ファイファー。つい最近「ダーク・シャドウ」(・2012・)でも恐ろしい奥さんを演じていた。「スターダスト」(Stardust・2007・英/米/アイスランド)では恐ろしい魔女を演じ、ロバート・デ・ニーロと共演している。ボク的にはかわいかった「眠れぬ夜のために」(Into the Night・1985・米)が良かったなあ。そすがに歳を重ねるとカワイイでは売れなくなってくるということか。

 FBIのスタンスフィールドはトミー・リー・ジョーンズ。つい最近「終戦のエンペラー」(Emperor・2012・米/日)でマッカーサー元帥を演じていた。ただ今はCMの宇宙人ジョーンズの方が有名かも。ボク的にはやっぱり「ローリング・サンダー」(Rolling Thunder・1977・米)だなあ。「ノーカントリー」(No Country for Old Men・2007・米)も強烈だったけど。

 長女ベルはディアナ(ダイアナ)・アグロン。TVドラマの「Glee」(Glee・2009〜・米)に出ている人で、映画では「バーレスク」(Burlesque・2010・米)に出ていたらしい。意外とアクションがいける。

 長男ウォレンはジョン・ディレオ。話題になったミッキー・ルーニーの映画「レスラー」(The Wrestler・2008・米/仏)でスクリーン・デビュー。警察群像ドラマ「クロッシング」(Brooklyn's Finest・2009・米)にも出ている。今後楽しみな子役。

 原作はトニーノ・ブナキスタの「隣のマフィア」(文春文庫)。作家で脚本家でもあるらしい。脚本作品にハーベイ・カイテルの「マッド・フィンガーズ」(Fingers・1978・米)をリメイクした「真夜中のピアニスト」(De battre mon coeur s'est arrete ・2005・仏)がある。ほかの映画は日本劇場未公開が多い。

 脚本はリュック・ベッソンとマイケル・カレオの2人。マイケル・カレオはアメリカのライターで、フランス人のリュック・ベッソンと書くことで両国の対比を際立たせたのだろう。マイケル・カレオが手掛けたのは、監督も兼ねた日本劇場未公開の「ラストタイム 欲望が果てるとき」(The Last Time・2006・米)がある。

 監督・製作・脚本はリュック・ベッソン。監督するのは「アンジェラ」(Angel-A・2005・仏)が最後といっていたはずだが……本作も入れて6本は撮っている。基本、ハリウッド映画が好きなんだと思うが、フランス映画っぽくないアクションなどたくさんのヒット作を生み出しているのは確か。ただ脚本・製作作品を多く作り過ぎて、薄っぺらくなってきていたことも確か。最近で良かったのは「96時間」(Taken・2008・仏/米/英)くらいか。本作でやたらタバコを吸っていたのはなぜか。アメリカ人もあまりタバコは吸わないと思うのだが。

 銃は、冒頭のファミリー殺害シーンで黒ずくめの殺し屋が使うのが、たぶんサウンド・サプレッサー付きのベレッタM92。FBIのスタンスフィールドはディテクティブのボブド・ハンマーか。家にはグロックと1911オートがあり、殺し屋たちはボレったM92のシルバー、M93R、ポンプ・ショットガン、ミニミ、東ドイツあたりのAKのMPi、RPGまで。FBIはグロック、MP5、M4カービン。ウェポンはクリストファー・マラディエールとあったと思うのだが、IMDbではマーク・レローヤーとか。この人は「トランスポーター3」(Transporter 3・2008・仏/英/米)や、残念だった続編「96時間/リベンジ」(Taken 2・2012・仏)などを手掛けている。

 公開4日目の、平日の初回、銀座の劇場は全席指定で、日曜にムビチケで確保。20分前暗いに付いたらすでに開場済み。さすがに平日ということで高齢者が多い。引退した人か、月曜が休日の人か、395席に3.5割くらいの入りとはビックリ。男女比は5.5対4.5くらい。カップルの高齢者が多かった。

 気になった予告編は……ほとんどほかの東宝系と同じ。
 
 上下マスクの「ウォーキングwithダイナソー」は木梨憲武ナレーションの新予告に。フォト・リアリスティックな絵がすごい。BBCのTV番組的なものを想像していたら、もっと映画的な感じ。面白そうだが、やっぱり子供向けということになるんだろうか。3Dもあって12/20公開。

 「大脱出」はシルベスター・スタローンとアーノルド・シュワルツェネッガー共演のアクション。またかという感じはするが、単純に面白そう。1/10公開。

 「かぐや姫の物語」は新予告。鉛筆の下書きのような絵でちゃんと2時間なりを見せられるのか。キャラクターはかわいらしく、歌が良い。なんだか声が今井美樹に似ているような気がしたが、二階堂和美という人らしい。

 スクリーンが左右に広がって本編へ。


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