The Wolf of Wall Street


2014年2月23日(日)「ウルフ・オブ・ウォールストリート」

THE WOLF OF WALL STREET・2013・米・2時間59分(IMDbでは180分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、菊地浩司/シネスコ・サイズ(一部ビスタ、一部デジタル、Arri、Canon、Hawk Scope、Super 35)/ドルビー・デジタル(IMDbではDATASATも)

(米R指定、日R18+指定)

公式サイト
http://www.wolfofwallstreet.jp
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

ジョーダン・ベルフォード(レオナルド・ディカプリオ)は22歳で結婚し、LFロスチャイルド証券に就職すると、やり手証券マンの上司マーク・ハンナ(マシュー・マコノヒー)から、株の売り方はもちろん、酒や女、ドラッグまでも教えられる。ところが1987年10月19日、ブラック・マンデーにより会社が倒産してしまい途方に暮れるが、妻のテレッサ(クリスティン・ミリオティ)に婚約指輪を質に入れてもいいから電気屋の店員ではなく、やりたい仕事をやれと言われ、ぺニー株と呼ばれる店頭扱いのみの株を売る郊外にある小さな証券会社に就職する。そして持ち前の口のうまさで株を売りまくり、ひと財産を築いたころ、同じアパートに住むドニー・アゾフ(ジョナ・ヒル)と知り合い、一緒に証券会社を立ち上げることにする。

74点

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 汚い言葉、度を越した悪ふざけ、セックス、ドラッグ、犯罪、拝金主義……そんなもので埋め尽くされた3時間。それに耐えられるのなら見る価値のある映画。コメディのネタとして受け入れられれば笑えるだろう。そうでないと、3時間は長いし、拷問のように感じられるかも。見終わったとき悪夢を見た後のような感覚になる。彼らにモラルはない。楽しくないし、嫌になってくる。落ち込むかも。結局はすべて金でどうにかなり、刑務所の中でさえも金があれば快適に過ごせると。

 しかも、実話に基づく映画でありながら、わざわざ「実話に基づいてはいるが映画はフィクションだ」と断り書きまで入れている。マクドナルドやベニハナなど、実在の企業名も出てくるが関係ないとしている。そして、プロデューサーでもあるレオナルド・ディカプリオは、原作者のジョーダン・ベルフォードから訴えられている。

 それにしても、なぜディカプリオは6〜7年もかけてこの原作を映画化したいと思ったのか。ウォール・ストリートがこんなにも酷いところだというのは、良くわかった。株のブローカーの中には、こんなに酷いやり方をしている会社もあると。こんなことで株の値が上がったり下がったりする。はたして正しいシステムなのか。問題提起しているのは確かだろう。

 しかし、わざわざ日本でR18+という成人映画に指定しておきながら、ボカシのオンパレードというのは納得できない。ジャマ。とても気になるし、シラける。ここまでボカすならR15+とかでいいのではないだろうか。R18+ならボカす必要はないだろう。ちらりとヘアが映ったり、男性のものが映ったりする程度なら「クライング・ゲーム」(The Crying Game・1992・英/日)などほかにもあったし、ボカシはなかった。直接セックスを表現するカットはマズイとしても、それ以外は必要なんだろうか。最近はヘアーくらいはボカさない傾向だったのに。

 主演はレオナルド・ディカプリオ。もちろん熱演だが、ボク的にはアクション作品がはまり役のような気はする。ただ年齢とともに難しくなってくるが。本作の前がリメイクの「華麗なるギャツビー」(The Great Gatsby・2012・豪/米)で、その前が「ジャンゴ繋がれざる者」(Django Unchained・2012・米)。えげつない悪役もやる。大スターなのに偉ぶった感じがないところが良い。

 ベルフォードの最初の上司マーク・ハンナはマシュー・マコノヒー。同じ年に製作された最新作「ダラス・バイヤーズクラブ」(Dallas Buyers Club・2013・米)で体重を21キロも落としたので、本作でもかなり痩せている。ボクとしては「サハラ 死の砂漠を脱出せよ」(Sahara・2005・英/西ほか)見たいな役が好きなんだけどなあ。

 共同創設者となるドニー・アゾフはジョナ・ヒル。「マネーボール」(Moneyball・2011・米)で大学出の優秀な分析屋をやっていた人。どったかというと目立たない地味な役が多い人だが、本作出はかなりエキセントリック。

 FBIのパトリック・デナムはカイル・チャンドラー。捜査官に雰囲気がピッタリ。「ゼロ・ダーク・サーティ」(Zero Dark Thirty・2012・米)や「アルゴ」(Argo・2012・米)など話題作にちゃんと顔を出している。買収されそうで、そうではないところが良い。

 スイスの銀行のジャン=ジャックはジャン・デュジャルダン。アカデミー賞に輝いた「アーティスト」(The Artist・2011・仏/ベギー/米)で主役を演じた人。それではクラーク・ゲーブルみたいだったが、本作ではもっと年寄りというか重役っぽい感じ。

 ベルフォードの父親はロブ・ライナー。名作「スタンド・バイ・ミー」(Stand by Me・1986・米)の監督だ。実は監督作よりはるかに役者としての作品数の方が多い。最近の監督作品は「最高の人生の見つけ方」(The Bucket List・2007・米)。

 クレジットはなかったが、「マルコヴィッチの穴」(Being John Malkovich・1999・米)の監督のスパイク・ジョーンズも出ていたらしい。

 脚本はテレンス・ウィンター。ライターとしては主にTVで活躍していた人。「ザ・ソプラノズ/哀愁のマフィア」(The Sopranos・1999〜2007・米)では脚本の外監督もやっている。映画では、ヒップホッパーの50セントの壮絶な半生を描いた「ゲット・リッチ・オア・ダイ・トライン」(Get Rich or Die Tryin'・2005・米/加)を書いている。こういったエクストリーム人生みたいなものに手腕を発揮する人なのかもしれない。

 監督はディカプリオとよく仕事をしているマーティテン・スコセッシ。本作ではプロデューサーも務めている。この前に監督したのはまったく正反対のようなファンタジーの「ヒューゴの不思議な発明」(Hugo・2011・米)。黒澤明監督を尊敬し、「夢」(Dreams・1990・米/日)にも出演したのは有名。さまざまなジャンルの映画を手掛け、大学でも教えている。まさに教授といったイメージ。ロバート・デ・ニーロとも良く仕事をしていて、「タクシードライバー」(Taxi Driver・1976・米)は強烈だった。ボク的には「アフター・アワーズ」(After Hours・1985・米)が好きだが……。

 FBIが使っていた銃はP226。実際の制式銃だ。

 ほかに目立っていたのはタバコで、この時代、こんなにタバコを吸っているのだろうか。大麻などを吸うにはいるのか……。そして字幕の斜体のジャギー。酷い低解像度。いつの時代だ。

 実はこの映画見る気がなかったのだが、劇場のポイントがたまっていて2月中に使い切らなければならなかったので、見た。タダだからまあいいとしても、見ない方が良かったかもという気もした。

 公開24日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、10分前くらいに開場。やはりアカデミー賞にノミネートされたからか、観客層は若い人から中高年まで幅広く、3週間以上たってもこの劇場の2番目に大きなスクリーンで上映され、しかも301席の7割くらいが埋まっていた。お下劣な話なのに、男女比は4.5対5.5くらいで、やや女性が多かった。ディカプリオ&アカデミー賞パワーか。

 気になった予告編は……上下マスクの「トランセンデンス」は進化を描くSFで怖そうな雰囲気が気になる。ジョニー・デップとモーガン・フリーマンも出ているし。6/28公開。

 上下マスクの「MONSTERZモンスターズ」は超能力者同士の戦いを描くものらしい。ちょっと雰囲気は「DEATH NOTEデスノート」(2006・日)っぽい。藤原竜也が出ているし、タイトルの表記も似ているし、日テレだし。ただオリジナルは韓国映画らしい。サイトは懲り過ぎかうまく表示されなかった。5/30公開。


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