2021年3月15日(月)「アウトポスト」

THE OUTPOST・2020・米/ブルガリア・2時間3分

日本語字幕:丸ゴシック体下、大城哲郎/字幕監修:大久保義信/ビスタ・サイズ(IMDbでは1.85。表記なし、公式サイトではシネマスコープ)/音響表記なし(公式サイトでは5.1ch)
(米R指定)

監督:ロッド・ルーリー
原作:ジェイク・タッパー、
   "The Outpost: An Untold Story of American Valor"
脚本:ポール・タマシー、
   エリック・ジョンソン
撮影:ロレンツォ・セナトーレ
出演:スコット・イーストウッド、
   ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ、
   オーランド・ブルーム、ほか

公式サイト
https://klockworx-v.com/outpost/
(全国の劇場リストもあり)

アメリカ陸軍は2006年からアフガニスタン北部に何カ所かのアウトポスト(前哨基地)を置き、タリバンの流入を防いでいた。その1つキーティング前哨基地にロシャメ2等軍曹(スコット・イーストウッド)たちが派遣されてくる。そこは周囲を山に囲まれたくぼ地で、防御するには非常に不利な地勢だった。指揮官のキーティング大尉(オーランド・ブルーム)は、地元の住民とタリバンを引き離すため交渉を続けていたが、ある日、司令部の高級将校から戦闘車両をもどすように命令を受け、自身が運転して届けることにする。

76点

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 恐い映画。まるでその戦場にいたかのような気分になり、徐々に仲間を失い、全滅するかもという恐怖を味わう。実際の戦場の何百分の1だとしても、かなりの恐怖と焦燥感。これが戦場。どうにか戦争なんてしなくて済ませられないのかと思ってしまう。

 アフガニスタン紛争の『カムデシュの戦い』を描いた実話の映画化で、この戦闘の後、このような前哨基地は閉鎖されたとラストに字幕で出る。監督のロッド・ルーリーはウエストポイント卒(エリート?)の元軍人で、4年の従軍経験もあるんだそう。だから撮り方がリアル。しかも包囲された戦闘シーンはあちこちから弾丸が飛んでくるわけで、それをちゃんと弾着で表現している(トレーサー的な弾はCGだと思うが、ひょっとしたら弾着もデジタルか)。カメラが役者と一緒に移動し、その先で爆発が起こったり、奥の山の斜面から銃撃があったり、戦場のカオスな状況が再現されている。一体どうやって撮影したんだろう。そんなカットがいっぱい。ハンビーのフロント・ガラスにも次々と着弾し、ヒビが入って行くとか、とにかくリアル。だから余計に恐い。素晴らしい撮影と臨場感。

 これで「ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実」(The Last Full Measure・2019・米)みたいに、弾丸が空気を切り裂く音とか、被弾する材質によって違うもっと大きな音の弾着音とか、音響に力を入れてサラウンド効果をアップしたら、ものすごい臨場感になっていたことだろう。M2の発射音や砲弾の炸裂音など、センサラウンド並みの低音の振動は凄かったけど。これ、家庭じゃ無理だろうなあ。

 やはり印象に残るのは、スコット・イーストウッドとケイレブ・ランドリー・ジョーンズの2人。スコット・イーストウッドはあまり作品に恵まれない感じだったが、ようやく良い作品に巡り合えたか。そしてケイレブ・ランドリー・ジョーンズは「スリー・ビルボード」(Three Billboards Outside Ebbing, Missouri・2017・英/米)や「X-MEN:ファースト・ジェネレーション」(X: First Class・2011・米/英)で主要キャストじゃないのに強い印象を残した人。尖った感じが素晴らしい。本作でもそうだった。そしてキャストはみな訓練を受けたようで、ちゃんとトリガーから指を外している。

 銃は、アメリカ軍がACOG付きのM4、M203グレネード・ランチャー付きも。そしてベレッタM9、M240(FN MAG)、M249(ミニミ)、M2ブローニング、敵から奪ったドラグノフなど。タリバンはAK。ほかに迫撃砲とM136 AT4ライト・アンチ・アーマー・ウェポンも登場。

 戦争映画なので、かなり血まみれ。足がちぎれたり、傷口から骨が出ていたり、恐ろしい場面も多々ある。その辺の覚悟は必要。アメリカではR指定。

 ラスト、実際の人物の写真と俳優の写真が出るが、実に良く似ていて驚かされる。見事なキャスティング。それにしても、戦死した兵士たちがみな21歳とか22歳、23歳で、こんなに若い内に命を失ってしまったのかと思うと、辛く悲しい。そして実際に戦闘に参加していた兵士も撮影に参加していたらしい。エンド・クレジットでインタビューが流れる。さらには、ニュース番組でインタビューを受ける映像も流れ、映画物語ではなく実際にあったことなんだとあらためて思わされる。そしてエンドロールの終わりに、部隊全員で撮ったらしい集合写真が大写しになる。天気の良い日で、みんな明るい笑顔だ。それが一層悲しい。

 公開4日目の、平日の初回、品川の劇場は全席指定で、前日にネットで確保。当日は15分前くらいに開場。スクリーンは1.66くらいのビスタで開いており、最初は8人くらいいて若い日から中高年まで幅広かった。大学生、時間潰しのサラリーマン、引退した人という感じなのだろうか。女性はゼロ。最終的にはこの比率で、広めの117席に20人行ったろうか。11席あったプレミアム席は空のまま。ただ最後列のペア・シートにオヤジが1人座っていたが……。

 明るくてよく見えないCM・予告の途中でマナーがあり、ラストに上下マスクの映画泥棒、暗くなって、映倫からビスタのまま本編へ。


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