2001年10月21日(日)「キャッツ&ドッグズ」

CATS & DOGS・2001・米・1時27分

日本語字幕翻訳:石田泰子/ビスタ・サイズ/ドルビーデジタル・dtss・SDDS

〈米PG指定〉
日夜、犬アレルギーを解消する特効薬を開発するために自宅で研究を続けているブロディー教授(ジェフ・ゴールドブラム)は、美しい奥さん(エリザベス・パーキンス)と小学生の息子スコット(アレクサンダー・ポラック)と、愛犬と暮らしていた。ある日、その愛犬が猫とのケンカで行方不明になってしまったことから、息子を慰めるために奥さんはポケート・ビーグルの子犬(声:トビー・マクガイア)をもらってくる。実は、行方不明になった犬は、世界征服をたくらむ猫一族からプロディー一家を守るために派遣された犬の諜報機関のエージェントだったことから、なにも知らないポケート・ビーグルは突然、行方不明になったエージェントの代わりを勤めることになる。

78点

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 あまりに荒唐無稽の設定なので、子供向けのくだらない映画ではないかと疑いながら、それでも驚異的な映像マジックが見られればいいやくらいの気持ちで見に行った。

 この後ろ向きの期待はみごとに裏切られた。おもしろい。笑える。すごい。かっこいい。かわいい。楽しい。夢がある。007で、0011で、スパイ大作戦で、ニンジャで、マトリックスで、ベイビー・トークで……。例のテロ事件の影響で劇場の上映予定がめちゃくちゃになったために、急遽上映が決まったらしく、ほとんど宣伝をせずに公開となってしまった。しかし、見ておくべき作品だと思うなあ。思わず拍手しそうになってしまったし、犬が人間を思う気持ちがピュアで、真っ直ぐで、感動してしまった。あやうく涙が……。年とったのか。

 ただし、ノレるかノレないか。これが評価の分かれ目となるだろう。やりすぎだよ、と思えばそれでおしまい。だが、素直に笑えるようなら、やがては手をたたきたくなるほどハマってしまうだろう。

 ボクがハマったのはのっけから。導入のアバンタイトル部分、実に鮮やかに普通の世界から、犬や猫がしゃべるおとぎの世界へ移行してみせるのだ。タイトルが出た時点でボクはズッポリと引き込まれて、すっかりおとぎの国の住人になってしまっていたというわけ。場面転換にワイプを使うのも、コメディやおとぎ話ではお約束でしょ。

 もちろん高度なCGやアニマトロニクス(いわば遠隔操縦ロボット)がいたるところに使われているのだが、生の動物たちの演技がまたすばらしい。よく訓練されている。この動物たちのトレイナーが「ホワイトファング(White Fang・1991・米)」や「マウス・ハント(Mouse Hunt・1997・米)」「グリーンマイル(The Green Mile・1999・米)」を手掛けたブーン・ナーという人。

 ジェフ「フライ」ゴールドブラムは、こういう役にピッタリ。世間のことに疎い学者バカが似合っている。とぼけた味がいい。しかし、やっぱりボクとしては奥さん役のエリザベス「ビッグ」パーキンズがいい。最近で目立っていたのは「フリントストーン/モダン石器時代(・1994・米)」と涙なしには見られない「34丁目の奇跡(・1994・米)」くらいしか思い浮かばないが、美人だよなあ。とても40歳とは思えない。熟女だけど。

 声の出演もスゴクて、まず主役のポケット・ビーグルのルーに「カラー・オブ・ハート(Preasantville・1998・米)」、「サイダーハウス・ルール(The Cider House Rules・1999・米)」、「楽園をください(Ride with the Devil・1999・米)」のトビー・マクガイア。

 ベテラン・エージェントで、何かとルーを助けてくれるアナトリア・シェパードのブッチに「レッド・オクトーバーを追え!(Hunt for Red October・1990・米)」、「マーキュリー・ライジング(Mercury Rising・1998・米)」のアレック・ボールドウィン。

 犬の秘密諜報機関のボスのマスチフに、アメリカ・ライフル協会会長でもある「ベン・ハー(・1959・米)」、「十戒(Ben Har・1957・米)」、「大いなる西部(・1958・米)」「猿の惑星(Planet of the Apes・1968・米)」のチャールトン・ヘストン。

 前髪が長くて前が良く見えない心優しきデカ犬のエイジェント、サムに「グリーンマイル(The Green Mile・1999・米)」、「隣のヒットマン(The Whole Nine Yards・2000・米)」のマイケル・クラーク・ダンカン。

 地下に隠れ住んでいてハイテク機器の使い手、チャイニーズ・クレステッドのクーに「逃亡者(・1993・米)」、「追跡者(・1998・米)」、裏切り者を演じた「マトリックス(Matrix・1999・米)」のジョー・パントリアーノ。

 ふらりと町にもどってくる謎の熟年美女(美犬?)、サルーキ・ハウンドのアイビーに「イーストウィックの魔女たち(The Wiches of Eastwick・1987・米)」、「依頼人(・1994・米)」、「グッドナイト・ムーン(・1998・米)」のスーザン・サランドン。

 ただ、猫は気まぐれさゆえに、いつも悪役にされることが多くて、今回も犬を滅亡させ世界征服の陰謀をたくらむ暗黒組織が猫族という設定。007の宿敵ブロフェルドがいつも抱いているペルシャ猫がボスで、ミスター・ティンクル。この設定だけで笑わせてくれる。

 ちなみにタイトルのcats and dogsは「猫と犬」のほかに、俗語で「くだらない商品」という意味もあるし、rain cats and dogsと言えば「土砂降り」のこと。このタイトルなかなか意味深なのでした。

 公開2日目。この映画は1日5回の上映のうち、はじめの3回が日本語吹き替え、夕方からのラスト2回が英語・日本語字幕という方式なので、買い物などを済ませてから夕方再び映画街に向かった。その字幕版1回目、50分前についたらロビーに三々五々といった感じですでに待っている人が。

 45分前に整列入場となる旨の案内があって列を作らされた。この編の手際はなかなかグッド。どんどん人が増え、最終的には552席の7割ほどが埋まった。

 銀座で見たらさすがに10代後半から20代前半の若いカップルが多く、オヤジ、オバサンは全体の3割程度。男女比はほぼ半々。母と小学生という組み合わせもチラホラいたが、字幕で大丈夫だったのか。最後列から3列目から前へ5列×10席の指定席も半分ほどが埋まってしまった。うーん、さすが銀座か。

 新しめの劇場なので、音はクリアだし立体感も素晴らしい。同じ映画でも古い劇場とはだいぶ印象が違うだろう。やっぱりこういう劇場で映画は見たい。


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