2021年12月17日(金)「ラストナイト・イン・ソーホー」

LAST NIGHT IN SOHO・2021・英・1時間58分(IMDbでは1時間56分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、牧野琴子/シネスコ・サイズ(ドルビーVISION。IMDbでは2.39、Arri ALEXA)/ドルビーATMOS
(英18指定、日R15+指定)

監督:エドガー・ライト
製作:エドガー・ライト、ほか
脚本:エドガー・ライト、
   クリスティ・ウィルソン=ケアンズ
撮影:チョン・ジュンフン
出演:トーマシン・マッケンジー、
   アニャ・テイラー=ジョイ、
   ダイアナ・リグ、
   テレンス・スタンプ、ほか

公式サイト
https://lnis.jp
(全国の劇場リストもあり)

幼い頃に母と父を亡くし、祖母に育てられた田舎育ちのエロイーズ(トーマシン・マッケンジー)は、母譲りで霊感が強く、感性が豊かで、特に1960年代のファションや音楽などに興味があり、ファッション・デザイナーを目指していた。そしてついに念願のロンドンのデザイン学校に合格すると、1人で上京することに。しかし、寮生活になじめず、ソーホー地区のアパートを借りることに。すると、その夜から、60年代のソーホーで歌手を目指す同年代の若い女性、サンディ(アニャ・テイラー=ジョイ)の夢を見るようになる。

74点

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 衝撃的スリラー&ホラー。しかも正攻法というか、極力、音で驚かすようなことをしないで、シチュエーションや雰囲気、そして出来事で恐がらせていくタイプ。だからじんわり恐く、後々まで恐い感じが残る。うまいなあ。実際にどうなのかは別として、見ていて、かなりヒッチコックを意識したのではないかと感じる部分は多くあった。たぶんコアは「サイコ」(Psycho・1960・米)ではないかと。ナイフで刺して血まみれ。

 ただ、主人公のキャラクターが、ちょっと…… 最初は彼女のサイドで見ているのだが、次第についていけなくなる。なにしろ、事件のほとんどは主人公のせい。精神的な病というか障害があって悪夢に悩まされていたとしても、過剰というかわがままというか、感情のまま勝手な思い込みによって反応し、周りの人たちを傷付け、問題を大きくしていく。まるで諸悪の根源ではないか。見ていると避けられるのに、まったくそうしていない。見方を変えれば悪魔のような女。言い過ぎかなあ。

 特にうまいなあと思ったのは恐ろしい霊たち。この高解像度でクッキリのデジタル時代でも、おぼろで恐ろしいものはこうやれば作れるという、お手本のような恐ろしい表現。日本のホラー映像作家の方々は参考にして欲しいなあ。そして素晴らしいのが、鏡のトリック。こちらにサンディがいて、鏡の中にエリーがいる。姿見や洗面所だけでなく、クラブの回り階段の壁とか、ショーウィンドーとか、あり得ない表現。デジタルだと思うが、どうやって撮ったんだろう。そしてダンス・シーンでは、男の相手が次々とサンディからエリーに入れ替わる。素晴らしい。圧倒される。

 まあにかく、メインの2人がきれい。美人。ホラーは美人のほうが恐い気がする。エリーを演じたトーマシン・マッケンジーは傑作戦争映画「ジョジョ・ラビット」(JoJo Rabbit・2019・チェコほか)で隠れていたユダヤ人少女を演じていた人。もうこんなに大人に? 60年代の美女サンディを演じたアニャ・テイラー=ジョイは傑作スペイン・ホラー「マローボーン家の掟」(Marrowbone・2017・西/米)で近所に住む美少女。このあと出演作が目白押し。2人ともM・ナイト・シャマラン作品に出ているのはただの偶然か。

 そして60年代がてんこ盛り。レコードで掛かる楽曲はもちろん、ファッション、タバコ、もちろんダンスはゴーゴー・ダンス。すごい。若い人には逆に新鮮では?

 公開8日目の初回、といっても平日のほぼお昼近く、新宿の劇場は全席指定で2日前にネットで確保。当日は15分ほど前に開場。観客層は平日だけに、大学生らしい若い人と、定年過ぎのシニア層という感じ。そこに時間の空いた営業の人か、この日が定休の中年層がチラホラ。最終的には122席に30人ほどの入り。平日はこんなものだろう。男女比は、女性が男性の半分、2対1くらい。

 山崎紘紘菜が卒業するというシネマチャンネルの後、飲食OKとなり、半暗に。CM、予告と続いてマナーから暗くなって映写機のマスクが左右に広がってフル・サイズとなり、まぶしい足元注意の、迫力の映画泥棒、映倫、光の点滅に注意が出て本編へ。


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