2001年10月27日(土)「スウィート・ノベンバー」

SWEET NOVEMBER・2001・米・2時00分

日本語字幕翻訳:伊原奈津子/ビスタ・サイズ/ドルビーデジタル・dtss・SDDS

〈米PG-13〉
広告代理店でクリエーターとして活躍するネルソン(キアヌ・リーブス)は、世界的な広告賞クリオ賞を2回受賞した業界の寵児。しかしクライアントとケンカして会社をクビになってしまう。そんな彼の前に、問題を抱える男性を救うのが趣味だという美しい女性サラ(シャーリーズ・セロン)が現れ、私の11月にならないかという。11月の1カ月だけ限定で、一緒に暮らさないかというのだ。

74点

1つ前へ一覧へ次へ
 うーん、難しいけど、こういう結末で良かったんだろうか。

 この映画は前半と後半でまったく調子が違う。前半はロマンチック・コメディで、後半は一転してブルーな悲劇。途中がなくて、同じ1つの映画という感じがあまりしない。まるで違う2人の監督が作ったような印象だ。泣かせのラブ・ストーリーであることには間違いないのだが。

 ラストには、せつない涙がわいてきた。あやうく流れそうになったが、どうにかこらえた。まわりでは、結構、鼻をすする音が聞こえていた。ほとんど20代前半のカップルばかりだったけれど。逆に、前半はコミカルなセリフやシチエーションがたくさん散りばめられていて、かなり笑えるのだが、ほとんどみんな笑わない。悲劇を期待しているんだろうか。それとも真剣なラブ・ストーリーをか。

 「不幸な男を救うのが特技なの。期間限定の恋をしない?」というセリフで始まる恋。そこがちょっと新しい感じがするが、盛り込まれている要素はだいたい昔からの多くのラブ・ストーリーにあるものばかり。ドジな出会い、ギャグと楽しい思い出の数々、病気、限られた時間、印象的な音楽……。違うのは、男女それぞれの職業が今風に広告代理店の制作と、ペット関連会社の起業家だったりすることくらい。あとはいろんな小さなエピソードが、どこまでリアルに、印象的に描けるかだろう。その意味で、本作は成功していると思う。各エピソードもこじつけではなく、自然に無理なくスムーズにつながっているし。

 少しネタばらしをすると、友人がゲイというのは、ありふれ過ぎていていただけない。確かに最近はそういうことがよくあるそうで、海外で暮らした経験のある友人に聞いたら、同じアパートに1人くらいはゲイの人がいるそうだ。でも、やっぱりそれはあまりにパターンにはまり過ぎ。ただ、「パトリオット(The Patoriot・2000・米)」のあの憎たらしいごっつい顔したイギリス将校が女装するとは! これは見物。

 映画の中で「ピンク・フラミンゴ(Pink Flamingos・1972・米)」なんて言葉が出てくるけれど、まさにそのとおり。1998年にリバイバル公開しているらしいが、一体どれだけの人がデバインを知っているだろうか。若い観客ばかりだったことを考えると、かなり難しかったと思う。でも、次第に見慣れてきて、なんとなくキレイに思えてくるから不思議だ。役者って言うのはスゴイ。

 広告で、「シティ・オブ・エンジェル(City of Angels・1998・米)」「ノッティングヒルの恋人(Notting Hill・1999・米)」「オータム・イン・ニューヨーク(Autumn in New York・2000・米)」そして2001年秋、今年、たった1本のラブ・ストーリー……と3本を名作ラブ・ストーリーのように上げているけれど、ボクはどれもダメ・ラブ・ストーリーだと思う。例が悪すぎないかなあ。それに、今年のラブ・ストーリーというと、ボクにとってはこれまでに「ザ・メキシカン(The Mexican・2001・米)」「プルーフ・オブ・ライフ(Proof of Life・2000・米)」などがあり、「コレリ大尉のマンドリン(Captain Corelli's Mandolin・2001・米)」がマイ・ベスト・ラブ・ストーリーなんだけど。

 心にしみた言葉があって、「結局みんな傷つくんだ(だからそれを恐れていたら恋なんてできない)」うーん、そうなんだねえ。

 シャーリーズ・セロンの家として使われる建物は、ハリウッド映画でよく登場するもの。「パシフィック・ハイツ(Pacific Heights・1990・米)」「ミセス・ダウト(Mrs. Doubtfire・1993・米)」「ゲーム(The Game・1997・米)」をはじめ多くの映画で使われている。

 監督のパット・オコーナーは、タイトルで損をしていた推理サスペンス「乙女座殺人事件(The January Man・1989・米)」「サークル・オブ・フレンズ(Circle of Friends・1995・米/アイルランド)」(未見)などを撮っている人。うまいのかどうなのか、よくわからない。

 場面転換にアイリスを使うのは、寓話的な話やファンタジーに多い。本作でも使われているということは、そういう意図があったということなのだろう。

 公開初日の2回目、45分前に着いたら20代前半の若いカップルを中心に15人くらいがロビーに。中年カップルはわずかに1組。30分前に列を作らされ、20分前に入場となった時点で400席の1/3が埋まった。

 当然、男女比は半々。最終的に8割ほどが埋まったが、中年以上は1割程度。もっと大人にも見て欲しいなあ。もとネタがあって、「今宵かぎりの恋(Sweet November・1968・米)」のリメイクらしい。アメリカのIMDbでは6.3と低い評価だが、ちょっと見てみたい気がする。

 エンヤの曲、いいですね。

1つ前へ一覧へ次へ